草の根活動−「エネルギー推進全米市民大会」(The National Conference on Energy Advocacy)が、2月3〜4日、ワシントンにおいて開かれた。原子力推進派の市民グループが、これまでの地道な活動から脱皮していこうという一つの現われである。水口氏は、今大会に参加した米国以外の代表で唯一人、演説の機会にめぐまれた。今号は、大会の模様を中心に、その印象などについて伺ってみた。

−−米国では2年位前から原子力推進派の市民グループの活動が顕著になっているそうですが、このようなグループが誕生するにいたった経緯からお聞かせ下さい。

 水口 米国には過去2年間に、エネルギー供給を確保していく政策を支持する100以上の市民グループが出てきています。誕生の経緯としてはいろいろあります。たとえば、GE、WH、GAなどの各メーカーがパブリック・スピーカーをボランテアに集め、そして、各市民の中に送り込み、こういう人たちが中心になって、草の根運動ができていく場合もありますし、またニューハンプシャーのように非常に反対の強い所では、それに対抗するものとしてできていくこともあります。

−−階層は幅広いのでしょうか。

 水口 幅広いですね。家庭の主婦の場合、学生が中心になる場合、あるいは大学の先生一有識者の集り等々があります。また、サンディエゴのような海軍の町では、退役将校の集りの場合もあるのです。

原子力推進派の横のつながりを密に

−−そのような市民グループが一同に会したものが「エネルギー推進全米市民大会」でしょうが、今大会のそもそもの発端は・・・

 水口 米国のユニークなシンク・タンクであるヘリテイジ(Heritage)研究所がホスト役となり草の根運動あるいは原子力推進派のリーダーたちに呼びかけ、全米大会を開きました。

 市民グループには、数百という会員を抱えている大きなものもあれば、これにはニューハンプシャー・ヴォイス・オブ・エネルギーがありますが、10数人の小グループもあるわけです。しかし、これまでこれらのグループの横のつながりがほとんどなくて、各グループはその州、地方で独自に活動していました。このたび、へリテイジ研究所の呼びかけで、一同に会して共通の興味のある情報を交換しあったり、草の根運動のやり方などを学習しあおうということになったのです。

−−参加者数は?

 水口 全米から700名、その他、外国からの招待として、日本、カナダ、西独から参加しました。

−−大会は、どのような意義をもっていたのでしょうか。

 水口 米国では、国民の三分の二が原子力に賛成しています。このことは、種々のアンケート調査で判明しているわけです。ところが、反対派の方は、一部でも声が大きいのですね。原子力を推進するのは、体制側とみられがちですが、米国では市民グループのほかにも、一般市民として原子力を支持する声が高まっています。しかし、今までの運動は地道であり、表に出てきませんでした。大会を開くことによって、一般国民の前に、こんなに多くの推進派の市民グループがいるのだということを示すとともに、エネルギー政策を推進する上で大きなパワーとなります。

分科会を中心とした大会

−−大会の中味についてお聞きしますが、2月3〜4日の2日間だけ開かれたわけですか。

 水口 正式にはそうですが、2月2日には前夜祭がもたれました。まず3日の午前は、ヘリテイジ研究所のフルナー会長、マクルーワー下院議員、マッコーマック上院議員、各市民グループの代表者たちのあいさつの後、日本の状況について私が演説しました。それから3日の午後と4日の午前は分科会を行ないました。それは20項目から成っていますが、少し例を挙げますと、行政のプロセス、メディアとのコンタクト方法、エネルギー経済、エネルギー生産がおよぼす健康問題、労働とエネルギー問題、パブリック・スピーキング、市民グループをいかに組織化していくか、学校の先生とのコミュニケーションの方法などでした。

−−そうしますと、分科会中心ということになりますが、その中で特徴的なことがありましたら・・・

 水口 市民グループをいかにして組織化してきたか、今後どのようにして合理的な活動をしていくかという経験談が話されたことです。

−−具体的にお話し願えますか。

 水口 ええ、メーカーのパブリック・スピーカーが婦人会やロータリー・クラブ、あるいは教会などへ行って、原子力の安全性とか必要性について、ひざをまじえて話す中で、もう少し情報の受け皿づくりというものをやっていったらということで組織化できた、というようなことです。

−−その場合、金銭的問題はどうなっているのでしょうか。

 水口 各メーカーは、情報、パブリック・スピーカー、会議をする場所を提供するだけで、金銭的援助はしていません。ここに特色があると思います。もっとも、こういう活動はそれほど金銭がいるものではなくて、推進を呼びかけるときのPR費、資料の印刷代は必要ですが、これらは会員のわずかな会費の中から調達しています。

−−わが国の場合、推進派のバックには政府や電力がいるのではないか、と一般の人たちは考えがちですが、米国ではいかがでしょうか。

 水口 市民グループをつくる段階で、専門家を派遣してお膳立てをする必要はありますが、金銭上はいま申し上げたとおりです。米国では、パブリックス・ピーカーの役割を重視しているのですが、わが国はこの点で遅れているといわざるをえません。

放射性廃棄物の処理は可能

−−ところで、大会後はどのようなアッピールがなされたのですか。

 水口 通常の大会の宣言と違って、エネルギーの必要性、一般市民の参加、規制、放射性廃棄物処理の4項目に分かれています。そして、一つ一つの定義づけと原子力推進派としての目標を掲げています。

−−たとえば、どのような・・・

 水口 カリフォルニア州などでは、経済成長をストップさせようとするエネルギー政策−ソフト・エネルギー・パスのようなものが出ています。これに反対して、今後、自分たちの生活を守る上で、エネルギーは欠くことのできないものであるという意味のことを述べています。また、放射性廃棄物が完全に解決するまでは、原子力は推進すべきでない、という反対理由については、科学技術的に解決が可能であるとしています。

−−米国におけるPA形成上の課題は何ですか。

 水口 原子力推進派の人たちは、米国民の三分二以上はその必要性を感じている、だからコンセンサスをすでに得ている、という見方をしているのですね。ただ、賛成している人たちでも本当に原子力を理解しているのでなく、停電したり、ガソリンがなくなったりすることに関して危惧しているのです。ですから、PAの目的はエネルギー危機に向いつつある現状の正しい理解と適切なエネルギー供給を確保する政策を支持してもらうことであるとみています。

わが国にも必要な情報の受け皿づくり

−−大会に参加されての印象を一つ。

 水口 市民グループの必要性について、私は2年前に報告書を書きました。日本でも、これまでPA活動は種々やっていますが、一般国民の中には、エネルギーに対する関心があまりなかったというか、情報の受け皿がなかったと思います、この点から、市民グループを形成して情報の受け皿づくりが必要です。エネルギーを正しく理解する会をつくって情報を受け入れ、学習する機運が国民の中に盛り上ったときに、PAが受け入れられたといえるでしょうね。

−−そういう活動をする上で、わが国にとって教訓になる点がありましたか。

 水口 今まで、どちらかといえば、原子力を推進することに対して、後ろめたさを感じていたように思います。しかしそうではなく、推進する側も自信をもって一般国民に呼びかけていく、そして今回の全米大会のようなものを開いていくことです。私は演説の中で、日本でやった後には国際的な大会をやろうと提案し、非常な反響がありましたが、わが国も米国のこの2年間の傾向を見ならう必要があるのではないでしょうか。