
スイス
【ベズナウ原子力発電所】
Outageのスケジュール=原子炉は11カ月運転し、補修点検および燃料取り替えのため1カ月停止するのが、ノーマルなケースである。今まで大体このようにやってきたが、一昨年ECCS関係の故障で6カ月停止したそうである。
1号機は5月から6月にかけて、2号機は8月から9月にかけて定検を毎年行っている。したがって、この期間はすべての従業員は休暇がとれないことになっている。1、2号機の定検計画は11月中に完了し、よほどのことがない限り、この計画に基づいて定検を実施する。さもなければ、運転期間の終了間ぎわまで計画を引き延ばすと、重点項目が不明確になり、定検を合理的かつ迅速に実施不可能になるきらいがあると考えている。
外部からの人材確保=1カ月で行おうとする定検中の補修、点検、燃料取り替え作業には、所内のスタッフだけでは追いつかない。当然外部に応援を求めねばならなくなる。約250人程度の作業員が1回の定検中にやってくる。その内訳は、定検の重点項目によって異なるが、例えば次のようになる。Sulzer社(タービン会社)約30人、BBC社(プラントメーカー)約40人、QA会社約10人、Welding会社約10人、Cleaner会社約20人、電気工事会社約40人、マンパワー社約40人、前記のマンパワー社だけは、人材の提供を主な業務としている会社で、後はメーカー工事会社である。マンパワー社から派遣されて来る人間は、技能的に低いレベルの者達である。
技術者の訓練=上述したように特に定検期間中は外部からも多数人材を投入せねばならない。しかし、それらの者達は必ずしも原子力に明るくはない。したがって、新しくサイトに作業に来たものは2日間みっちり教育を受けさせられる。教育には、スライドに始まりプラント内での立ち入り見学まで含まれ、作業現場を熟知し、安全性に重点が置かれる。
サイトのスタッフには、サイト内での教育の他に核教育センターでの約2週間受ける教育制度が設けられている。これは一般工員の場合であるが、放射線管理者ともなると、その訓練期間は1年間である。
原子炉運転者は、国が与える資格に上級のAと下級のBがあり、資格Aを持つオペレーターは2年に1度は、米国のウエスチング・ハウス・シュミレーションセンターで、1回約1週間再教育を必ず受けることになっている。
職業被ばく管理=プラント内外、すみずみに至るまで清掃が行きとどいている。清掃係は14人だけだそうだが、所員一人ひとりに自分達の作業現場を常にきれいに保っておくことを義務づけている。工作工具が備わったワークショップも実に整然とされていた。放射線管理は、ちり一つないプラントの整理整とんから始めねばならないということであろう。
きれいに清掃が行きとどいたプラントという印象もさることながら、管理区域の入口にはだれも立ってないことに、驚かされた。これは“Self access control”システムをとっているからとのことであった。すなわち、作業員の入域、退域は各人にまかされ、それぞれの手続き、例えば、退域時のフッド、ハンドモニターによる測定、ポケットチャンバーの読みとり等、すべてだれの監視もなく各人の自由意思にまかされている、ということである。
現在、スイス国内の基準は、年間5レムと3か月3レムが適用されているが、年間3レムに変更されつつあるとのことである。この発電所の実績として年間2レムを超える人はいないとのことであった。
プラント全体の作業員が1年間で受ける被ばく線量を120レム以下にもっていこうとしているそうである。
西ドイツ
保修に必要な人員=ノイラを例にした火力発電所では通常時の保修作業に693人いる全従業員の内232人が当たっている。外部から入っている人間は164人おり、その内80人が保修担当である。しかし、オーバーホール等の時には200人以上を外部から連れてくることになる。
一方、ビブリスを例とする原子力発電所では、全従業員480人の内191人が保修担当である。外部からは通常時100人入ってきており、その内約60人が保修作業担当である。それが定検ともなると400人以上にふくれ上がる。この内主な出向元は、60人ほどがRWEの他の発電所で、100〜250人がKWU、50人ほどがポンプメーカーで後は少人数ずつ約30の企業からきている。
RWEの放射線管理=国の規定としては、従業者最大許容被ばく線量、年当たり5千ミリレム、3カ月当たり2千5百ミリレムである。しかし、RWEでは会社規定として1日の最大200ミリレム、特別な場合でも300ミリレムとしている。
西独の場合、放射線関係従事者に“放射線パスポート”といったものを発行し、各自の被ばく記録、健康状態といったことから守らねばならない規則、注意事項といったものが書き込まれており、各人はこの“パスポート”がなければ原子力発電所等の放射線管理区域内での作業に就くことができない。
全国の従事者の被ばく経歴等はセンターのコンピューターに記録されている。
許容被ばく基準=西独の原子力法に明記されている最大許容被ばく基準は大体ICRPと同じである。一般市民のそれは、年間30ミリレムである。原子力発電所周辺の住民でも年間0.8ミリレム以下というデータを得ている。
職業被ばくの場合の基準値は5レム/年であるが、この基準値を守りながら発電所の保修作業を電力の従業員だけで行おうとしても不可能であるから、当然他の会社から応援を受けなければならない。そうすると、16年間の実績から見て作業員の被ばくの最大は許容値(5レム/年)の三分の一から四分の一といったところである。
放射線被ばくに対する医療体制=放射線被ばくに対する医学的検査が原子力法と放射性物質取扱い法で義務づけられている。
この検査に当たる医者は、ミュンヘンとベルリンにある労災医療研究所で、特別な講習を受けた者でなければならない。この講習は3週間で放射線防護医学、放射線物理、放射線化学、被ばくによる人体への影響等が教え込まれる。この講習を終了した医師は「放射線医師」としての資格が与えられ、放射線関係の医学的観点からの監督が国から委嘱される。この「放射線医」には、いずれの科の医師でも先の講習を受ければなれ、通常放射性物質を扱う企業の嘱託医、専門医としてその企業の従業員の健康管理を行う。しかし、例えば広報が企業の不利になるような被ばく事故であっても、国に報告せねばならないのである。
年間0.5レムを超えると、その時点から2カ月以内に放射線医の診察を受けなければならない。その場合放射線医は、被ばく線量のレベルにより1.5レム以上はグループA、0.5〜1.5レムはグループBとして医学的処理を施す。グループAの被ばく者は、その時点で人体に影響がなくとも、その後毎年定期検診を受けなければならない。グループBの者は、毎年の検診を必ずしも受けなくてもよいが、この場合放射線医の判断に任されている。これらA、Bいずれのグループとしても診察を受けた者は、その放射線医の証明なくして放射線管理区域内での作業はできないことになる。時には職場を変えざるを得なくなる場合もあり得るということであった。
0.5レム以上被ばくしたときの検診には、被ばくによる被害状況および原因、被ばく者の健康状態および被ばく歴などが詳細にチェックされる。
「ドーズ・メーターのみを信じていてはいけない」といったオースター先生の言葉が印象的であった。
放射線従事者の条件=放射線関係の作業に従事希望者は、完全な健康体が要求される。特に慢性胃炎、アルコール中毒、腎臓障害などの病気を持っている者は採用されない。また、精神病患者および身体障害者も採用されないのが普通である。
事故・故障に区別した医療処理=異常に高く、汚染や被ばくをした場合、その汚染および体内被ばくの程度に応じ、それを事故または故障として区別し、対処される。
汚染および被ばく者は、適切な病院に運ばれるが、他の入院患者から隔離する必要はない。
一度に200ミリレム以上被ばくした場合、火傷などをした傷害者に対すると同じ労災病院に直ちに運ばれ、適切な処置と検査を受けることになる。
オースター先生の関係されているプルトニウムも扱う燃料製造会社では、今までにも3千pciものα線を放出する同位元素が、尿中から検出される事故が起きている。また年間1.5レム以上被ばくする者は、管理区域内の従業員の一割は毎年いるそうである。これはプルトニウムを扱っているゆえ特別なケースであろう。
