
工業開発研究所は先ごろヨーロッパへ「発電プラントの維持管理システム実態調査団」(団長=木野村大三東電工業副社長)を派遣した。一行はイギリス、フランス、スイス、西ドイツをまわり、原子力プラントにおける放射線防護管理と技術者の確保育成などがどのように行われているかを調査した。以下、その実態調査報告書の一部を紹介する。
イギリス
【ハートルプール原子力発電所】
職業被ばく管理の基本的考え=全原子力発電所内を4レベルの“放射区域”および4レベルの“汚染区域”にクラス分けし、汚染区域の最も高いレベルの区域での作業に最も注意を払うよう規定されている。即ち、日本のように管理区域、非管理区域と大きく2クラスに分けるのではなく、詳細に区分けし、しかも放射線レベルと汚染レベルという、二種類の概念を区域分類と職業被ばく管理基準に採り入れている。
したがって、放射線レベルが高い区域でも汚染レベルが低いならば、あまり防護をしなくてもよいということである。従事者の安全教育=CEGB(英中央電力庁)から全従業員に“Central Electricity Safety Rule”という、発電所内でのすべての安全性に関する事項が網らされたルーズリーフ型本(新書版サイズ)を配布している。
この中に当然投射線の章があり各従業者は入社の時、このルールを理解し、必ず従うむねのサインをして受け取り、常に携帯しているもようである。
内部被ばく防護に対する考え=ホール・ボデーカウントを常時従事者に強請しているようではなく、異常事態発生した時に限り行うことになっている。その代わり、空気中基準をICRP(国際放射線防護委員会)のそれの十分の一としair borm monitorには最大限に気を配っているとのことである。「体内に入らないように防護することが重要であって、そのプロテクションを十分にやっていれば、平常時のホール・ボデー・カウントは必要ない」との所長の弁であった。
サイト従業員=現在、ハートルプール発電所には約400人のスタッフがおり、その内の50人は見習い期間中のものである。他の国の発電所(同サイズの)と比較して、少しスタッフが多いのは本来本社が行わねばならないような総務の仕事まで個々の発電所で行うからである、とのことであった。また、2基の 原子炉が運開しても通常のメンテナンスはこの人数で十分やっていけるとのことだ。
許認可事項=新建設の発電所の場合、あらゆる許認可手続きが完了すると、政府より“License”と“Condition”という二種類の書類が各発電所に渡される。所長は、その“Condition”に基づいて“Operation Instruction”を発行する。
許可が下りるとすべての設計はFrozen Drawingとして変更できない。しかし、緊急に変更の必要性が生じたときは、所長の責任において実施できるが、その変更の日より14日以内に法的手続きをとらねばならないことになっている。
査察/検査=英国の原子力発電所は、政府の検査、IAEAの査察のほかにURATOMのインスペクションも今後受けることになるかも知れないとのことである。
フランス
放射線被ばく防護システム=現在国が定めている被ばく基準は、ICRP(国際放射線防護協会)のそれよりむしろルーズである。しかし、EDF(仏電力庁)としてはICRPの十分の一を目標においている。
かつては5(N−19)で表される集積線量のみを被ばく基準としていたが、現在では世界のすう勢から年間許容線量を管理基準として採用している。2レム(年)でも守れると考えている。
作業員が被ばくする線源の5割はCo-60であるため原子炉に使われる材料をCo-60の発生しないものを選ぶ必要があろう。被ばく線量低減のための方法として(1)作業員が作業現場へ直行できるよう迷路をなくし通路を明確にする(2)クレーン等作業に使用する道具、機器類の能率とスピードを上げるよう改善する(3)作業開始前、被ばく予測等作業の計画を詳細に立てる。
放射線区域の作業着には特に実際の作業をさせる前に十分な訓練をさせ、プラント施設のシステムを理解させるようにする。この訓練のため、五分の一スケールのモデルプラントを2基持って活用している−を考えている。
【サンローラン原子力発電所】
サイトスタッフの構成=この発電所には、管理職およびエンジニアと呼ばれる人が合わせて約50人、1、2号機合わせて運転員54人、見習い補助用員が130人から140人、工員60人が現在働いている。また、補修関係者は平常時で約140人で、朝7時30分から夕方4時30分までが勤務時間で、残業はほとんどする必要がないそうである。オペレーターの54人を6グループに分け1基、1シフト当たり9人が運転を行っている。
外部からの人材要請の可能性=この平常時の従業員に加え、定検等、特別な場合には電気、機械、放射線等、専門のエンジニアで構成された3〜4人のグループが本部から必要とする発電所へ送られている。タービンのオーバーホールの時など、人材が大量に必要とする時にはタービンメーカー等、EDF以外の会社に応援を要請する時もあるが、通常の補修作業にはサイトスタッフのみで行うが、または多くのEDFの発電所から呼びよせる。
EDFはフランス全土を9つのregionに分割して、発電、送電の管理を行っているが、この1regionにつき80人から90人のエンジニアを抱えている。通常時、これらのエンジニアは各発電所に所属しているが、必要に応じて他の発電所に派遣される場合が多い。したがって、同一region内の技術者を各発電所間でうまく共用しているといえる。火力と原子力の間でも、この程度の共用が行われているそうである。ちなみにこのサン・ローラン発電所に所属するエンジニアは25人とのことであった。
管理区域内での作業=放射能汚染の非常に低いガス炉とはいえ、管理区域に入る時、少々厚手の学校の実験室用白衣と薄いビニールのシューズカバー、それに使い捨てをする紙製の帽子を私服の上に着用するだけであった。これは、ビジターだからというのではなくすべての作業員がそうであった。
空気が異常に汚染された時、その区域で作業せねばならなくなった時のみ、上下つながった作業着1枚、くつ下2枚、手袋1枚、ずきん1枚を着け、エアマスクを使用することになる。しかし、下着と作業着を重ねて着たり、手首、足首にテープを巻きつけたりする必要はなさそうである。
