<その4>


 ◆包括的な手順の明示が欠かせず


 競争状態になれば、発電所建設のように時間がかかる設備投資が抑制さ
れ、今後の需要の伸びに対応できない、という懸念が電力会社側から示さ
れる。しかし、競争状態が実現すれば、環境アセスメント(影響評価)の
厳しさを除いて、鉄鋼など装置産業と設備投資の環境に大差はない。独占
から円滑に移行できるように、競争条件を整備することのほうが重要であ
る。                               
 問題になるのは原子力発電の扱いだろう。原子力などのエネルギー政策
については、国と電力会社の責任を明確に分けるべきだ。       
 とくに問題なのはこれまでの原発に伴う使用済み核燃料の処理だが、こ
れについては電力会社から正当な料金を徴収し、そのうえで国が処理の最
終責任を担う方向が妥当ではないか。同様に、環境政策も国の責任を明確
にすべきだ。温暖化対策は、環境税や排出権取引などによって国が取り組
むべき政策である。                        
 今回の自由化は、包括的で構造的なものでなくてはならない。幸いなこ
とに、電力市場の設計については、すでに自由化をした諸外国の豊富な事
例があり、他国の試行錯誤を十分に参考にできる。          
 電力危機が起こった米カリフォルニアでは、地域特有の事情の他に、卸
売価格のみ自由にして小売価格を固定した問題や、自由化スケジュールを
示さなかったために発電所建設が抑制されたという明らかな規制政策の失
敗がある。                            
 日本はこの轍を踏まないように、包括的な自由化を断行すること、自由
化のスケジュールを明示することが肝要だ。完全自由化は一挙には実現し
ないが、自由化後の市場の姿とそこに至る段階は早く提示されなくてはな
らない。                             
 我々は、電力事業の自由化に反対しているのでは決してない。門戸を大きく開いて誰でも新規に参入できるように、手厚く歓迎することにはいささか異論があるのだ。

 自由経済とはいえ、電力事業は極めて公共性が高いことを十分認識し、長期展望にたった安定供給に責任感をもって当たっていただく事業家や企業が、新規に参入を希望されるなら、大いに歓迎もしよう。

 スケールメリットが事実存在する発電所の建設は、「鉄鋼などの装置産業の設備投資」とは雲泥の差がある。工場の自家発電設備を拡張し、余った電気を電力会社に買い取ってもらう、というやり方は従来から行われてきた。

 今後、自由化の環境がいくら整備されても、こういった工場の敷地内か隣接地などに、大型の原子力発電所の建設計画が持ち上がるとは思えない。せいぜい火力発電所が建つくらいだろう。しかもそれは極めて小規模に止まるだろう。

 火力でも環境アセスメントをパスしたものであればいいだろう。また、小規模でも十分経済性が満たされているなら、それもいいとしよう。

 電力事業の自由化は、発電所の新規建設を含めた確保から入るべきだ。独立発電企業(IPP)からの調達募集は平成8年度からはじめている。しかし、その累計調達量は遅々として進まない。応募し契約した後、IPP側の事情でキャンセルも出始めている。

 電力事業に新規に参入するということは、いくら資本が潤沢にあったとしても、決してやさしいものではない。それでも自由経済を標榜して止まない日本は、いくら基盤産業で公共性の高い電気事業といえども、新規に参入したいという事業者に門戸を閉ざすことはできない。

 しかし、自由化を急ぐあまり、既存の電力会社の犠牲の上に立って、新規参入条件を過度に甘くしてはならないだろう。

          「G研」代表