規制の構造を変えることで、電力の生産・販売と、送電の機能がアンバ ンドリング(分化)される。これによって新規参入者が入りやすくなり、 競争が活発になる。均一的な供給だけではなく、顧客ニーズに応じた付加 的サービスも生まれてこよう。 ただ、送電網をはじめ地域独占下でつくられた施設の利用料は、新規参 入者に不利にならないよう厳密に監視する必要がある。現在、新規参入業 者の契約量は対象市場の0.39%にすぎず、自由化は十分な効果をあげ ていないが、この背景には、託送料金などが必ずしも公正に設定されてい ないことがあると思われる。紛争処理への対応も含めて、専門の規制機関 を設立することが必要だ。 自由化の中核は市場における価格の形成である。卸売りの取引所を創設 し、新規参入者でも自由に売買できるようにしなけれぱならない。もちろ ん、すべての取引をスポット市場に集中する必要はない。多くの国で長期 相対契約が大きな役割を果たしている。スポットと相対、長期と短期、現 物と先物というように多様な取引が包含されればされるほど裁定によって 価格形成が安定しやすい。 ノードプールとよばれる北欧の取引所ではスポット取引は三割だ。ここ では次の日の一時間ごとの需給を均衡させる価格と、市場参加者の需要量 ・供給量が直物市場で決定され、系統運用機関に通知される。当日は予定 外の需要もあり得るから、系統運用機関は追加需要のための価格を設定し、 当日の微調整に対応する。先物市場もある。 「自由化しても電力の価格は下がらない」という見方もあるが、これは 自由化への反論とはなり得ない。価格は需給で決まるから、自由化がその まま価格低下を意味するわけではないが、重要なのは競争を通してコスト が削減されるということだ。地域独占下の企業でコスト削減余地がないと は信じがたい。 負荷率の上昇による価格の低下の可能性も重要だ。負荷率はピーク時の 電力量に対する平均電力量であり、これが高いほど供給設備が効率的に利 用されていることを意味する。日本の負荷率は56%程度であり、きわめ て低い。これを高めるには、需要が多い時間帯や季節の価格を高くして需 要を平準化させることだ。北欧市場のように一日前の市場で時間帯ごとの 価格が設定されれば負荷率が高まり、効率化を通して価格が下がる可能性 が大きい。 安定供給と効率化を両立させるために、独立した送電・系統運用機関の 設置と、取引所の創設が必要であることを述べてきた。ここで重要なのは、 このような電力市場のシステムを全国規模で設計することである。安定供 給のためには供給者が多数存在し、広い範囲で競争原理が働くことが望ま しい。また、全国規模での電力会社間の競争を促す必要がある。 独占からの移行にあたって、「市場支配力」をどう排除するかは諸外国 でも大きな課題だが、わが国の場合は、すでに全国ベースで9社の大企業 がネットワークでつながっており、この有利な条件を最大限に活用すべき だ。コスト削減を通して、最終消費者に便益が及ぶためにも、電力会社間 の切磋琢磨が望まれる。 現在までのところ、それぞれの区域を越えての電力会社間競争はきわめ て少ないが、この理由がどこにあるのか、実際のところはよくわからない。 区域を越えての送電には振替料金がかかり、遠隔地になるほど託送コスト がかかるという制度上の問題もある。しかし、そのほかに暗黙のうちにす み分けをしているようにも見受けられる。 |
専業農家は育たず、後継者も都会に出て会社勤めをするようになり、それでも農業が好きで残った後継者には嫁が来ない、という事態になった。幸い働き者の嫁が来ても、若い男子後継者は農業専門に従事することはできず、結局、爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃん(嫁)の「三チャン」で農業を細々と続けることになったではないか。
「規制の構造を変えることで、電力の生産・販売と、送電の機能がアンバンドリング(分化)される。これによって新規参入者が入りやすくなり、競争が活発になる」
新規参入者が入りやすくするということは、自由に出やすくしておく、ということにつながり、安定供給という最も重要な前提条件を脅かすことになりかねない。参入希望者は、参入前の準備で十分な体力をつけていなければならない。また、参入に当たっての厳しい競争、つまり、狭き門をくぐってきた者が本番のサービス競争に打ち勝ち、責任ある経営が継続されるというものだ。
「自由化の中核は市場における価格の形成である。卸売りの取引所を創設し、新規参入者でも自由に売買できるようにしなけれぱならない」
短期的な価格の引き下げは市場に関係なく操作は可能だろう。しかし、それが長期に渡って継続できるかが重要だ。
先行投資を余り必用とせず、送電線の心配もなく、販売も「卸売りの取引所」がやってくれるとなると、長期的にはもっとも安い原子力発電所を持っている既存の電力会社の提示できる価格よりも、短期的な販売戦略で安く提示して利益はそこそこに上げることができるかもしれない。
しかし、米国のエンロンのように、経営者のみが莫大な利益を懐に入れた段階で、電力事業という極めて公共性の高い事業から体よく撤退するかも知れない。これとて、市場経済のいうところの自由化では、誰も文句が言えないのだ。
「価格は需給で決まるから、自由化がそのまま価格低下を意味するわけではないが、重要なのは競争を通してコストが削減されるということだ」
コストさえ下がればいいというものではない。競争を通じて電力の供給がより強まればいいのだが、その手だては「本稿」には見あたらない。
既存の電力会社が、長年積み上げてきた送電網などの資産を取り上げ、環境や長期安定供給という経営理念に基づく原子力発電の運用など有利な条件をことごとく規制しての「競争」は、「公平な競争」とはいわない。
ボクシングの試合でたとえるなら、ヘビー級の選手とフェザー級の選手を闘わせてみようじゃないか、というに等しい。しかも、このままではヘビー級が圧倒的に強いから、手足を縛っておき、フェザー級のみ自由に闘わせてみよう、という魂胆が見え見えだ。こういう試合を「フェアー」とはいわない。
「負荷率の上昇による価格の低下の可能性も重要だ。負荷率はピーク時の電力量に対する平均電力量であり、これが高いほど供給設備が効率的に利用されていることを意味する。日本の負荷率は56%程度であり、きわめて低い。これを高めるには、需要が多い時間帯や季節の価格を高くして需要を平準化させることだ」
負荷率を高める努力は続けている。これも供給責任を認識している電力会社だから可能になるのであって、自由化で新規に参入する者は、価格を釣り上げても売れる需要が多い時間帯のみ売ることも可能になる。価格をいくら下げても需要が落ち込む深夜電力など、需給がひっ迫してくれば、供給をストップするだろう。
需要が落ちてときのベースロードの電力も誰かが供給しなければならない。それは、ベースロード用に適した原子力発電所を所有し運用している電力会社だから可能なのだ。
「現在までのところ、それぞれの区域を越えての電力会社間競争はきわめて少ないが、この理由がどこにあるのか、実際のところはよくわからない」
これはまさしく「下司の勘ぐり」、あるいは「被害妄想」というものだ。9電力間での競争、その最も顕著な例は、原子力発電所の自前建設にあった。競争心をあらわにして、立地から安全許認可に至るまで、難しい難題が山積する原子力発電所を9電力会社すべてが持つにいたったのである。各電力の経営者を始め、社員一同、「競争心」をメラメラと燃えたぎらせたからだ。
「電力会社間競争はきわめて少ない」と評価するということは、まだまだ勉強不足と言わざるを得ない。