<その1>

「朝日新聞」(2002年1月11日)


 屠蘇気分もようやく抜けた頃、アフガニスタン状勢も国内の経済状況も大きな進展なしで、マスコミ各社は紙面づくりに苦慮しているだろうと容易に想像できた。そんな1月11日、朝日新聞1面中央部、紙面の目立つ所に8弾組み(見出は4段)のセンセーショナルな記事が掲載された。

 いや、センセーショナルは見出のみだったが、その「原発コスト支援策要請」「国に電力業界」といった見出を見た関係者は、残っていた屠蘇気分も吹っ飛ぶほど仰天してしまったのである。

 この記事の見出を見る限り、電力業界のトップが記者会見でもして発言したのかと思った。それにしても朝日新聞以外の新聞にそういった記事は何処も扱っていないのが解せなかった。

 これは、朝日のスクープか、それとも原子力反対キャンペーンを展開している朝日のでっち上げか、いずれかと言うことになる。その結論は、先送りして、記事の内容を詳細に点検してみよう。

<1面>

  原発コスト支援策要請へ                    
                                 
        電力業界国に炭素税導入案も            


 電力業界は、原子力発電所の新設や核燃料サイクル計画の推進にかかる
費用について、政府に新たな支援策を要請する方向で電力会社間の協議を
始めた。電力小売りの自由化拡大が確実となり、原発を持たない新規参入
者に比べ価格競争で不利になる懸念が出てきたためだ。新規参入者が電力
会社に払う送電線使用料への負担金の上乗せや、炭素税の導入要請などを
軸に検討する。                 (13面に関係記事)
 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会が、昨年11月より、電力自由化を含め、今後の電気事業の在り方に関する審議が始まったばかりだが、それに並行して、電力各社で、自社の電気事業全般について多面的に検討を始めたばかりだ。

 従って、「政府に新たな支援策を要請する方向で電力会社間の協議を始めた」といった動きは、未だ何処にも見られない。第一の「でっち上げ」である。

 電力事業者が、原子力発電を持つ、持たないということ自体は、価格競争力の優劣とは直結しない。一般論としては、大型で設備の減価償却が進んだ原子力発電には価格競争力があることは言うまでもない。

 従って、「原発を持たない新規参入者に比べ価格競争で不利になる懸念が出てきた」というのも、まったくの根拠のない話である。原子力発電所をすでに持っている既存の電力会社が、この自由化の中で原子力発電所の所有が価格競争に不利になっていると、あたかも不平不満を主張しているような表現だ。第二の「でっち上げ」だ。

 「新規参入者が電力会社に払う送電線使用料への負担金の上乗せや、炭素税の導入要請など」も今後の検討課題になるかも知れないが、現時点ではこういったことを検討した事実はない。第三の「でっち上げ」。

           (次につづく)