■このG情報に異議あり■
この協定によって、国の許認可が下りても、知事が首を縦に振らない限り、電 力はその原発を稼働させることはできないのである。だからといって当該大臣な どが知事の説得に乗り出してくれた試しはほとんどない。また、知事も原発周辺 の全自治体の長が了解しない限り単独でゴーサインを出すはずがない。
したがって地元自治体への説明や説得は自ずから電力による孤軍奮闘の重要な 仕事となってきたのである。原子力安全技術の説明を正確に理解するには極めて 高度な知識が必要で、原発立地の知事や自治体の長といえども、安全技術を理解 できるまでの知識が豊富とまでは言い難く、だからといって国の原子力安全委員 会の英断に全面的に従うということにはならないのである。
となると、電力の地元への説明はそこそこで切り上げ、地元の地域開発に必要 な予算の不足分を寄付という形で補填せざるを得ないということになる。元々地 元には電源三法交付金や核燃料税、固定資産税といった形で決して少なくない資 金が、原発から上がる利益から廻っていたのは確かだが、人も行政も上を見れば きりがないといわれるように、もらえるものはもらって地元が潤うことに使おう となるは必定である。
ましてや自治体の首長達は選挙で選ばれた政治家、任期中にできるだけ資金を 集め、有権者の目に止まるような実績を挙げ、次の選挙に有利な材料にならない か考えるのも普通の成り行きだ。民主主義の裏の流れともいえよう。
しかし、朝日が記事で指摘しているように、原発の地元と電力会社がこのよう な「もたれ合い」慣習は改善しなければならないテーマであることは我々も賛成 である。我々が考えるその改善策を提示しておこう。
@原子力安全委員会は国民からの絶大なる信頼を勝ち取ること。そのためには 委員会の会合や配付資料を常にオープンにし、原発で何かあればテレビにも積極 的に出て説明すること。独立した機関になることは決まっているので言及を避け るが、委員の選定はその分野の最高の人材を、学界に限らず、民間も含めた分野 から選定することである。単なる「お飾り的人材」の選定だけは避けてもらいた い。
A新装なった原子力安全委員会が国民からの信頼をがっちり勝ち取った暁には、 大臣・知事・社長の三者による安全協定を完全廃止し、原子力安全委員会の許認 可に皆が従うこと。即ち、原子力安全委員会の許可が下りているにもかかわらず、 地元の知事の了解が取れないため、運転再開できないといった従来の状況を避け るためである。ただし、地元の知事や市町村の首長は原子力安全委員会に質問状 を送付して回答を得ることができるようにすることは肝要であろう。
B地元住民の方々や地方議会などへの説明や証言は、電力会社に任せておかず、 今後は原子力安全委員会の委員やスタッフが出かけていって行うこと。
C原発の建設計画の段階で行われる地元での「公聴会」は、意見陳述を希望す る地元住民の方の人数に制限することなく、一人5分以内に述べる意見を原子力 安全委員は傾聴すること。陳述人が多くなれば、何日でも続けること。その際、 質問は一切受け付けず、したがって解説・返答もない。これは本来の「公聴会」 に徹することを意味する。「公聴会」は公衆の意見を聞く会であって、公衆の疑 問に応える「説明会」にあらずである。これは民主主義を遂行する一つの手段で、 決して間違ってはならない手続きなのである。
D原発に関わり地元に落ちるお金は、電源三法交付金、核燃料税、そして従来 からの固定資産税に限定し、電力からの寄付金等は厳禁する。しかし、原発は電 源としての役割と、同時に地域開発への貢献も当然あり得るから、電源開発と地 域開発との共存共栄策の観点から、上記の公的な交付金が不足なら、電源三法交 付金の原資として徴収される電力からの特別税を増やすことを検討すればいい。 そして、建設時に一括して交付するのばかりではなく、原発の存在する期間に分 割して交付する選択もあり得る。いずれにせよ、電力から直接地元にわたること は避けねばならない。
「東京電力から過去20年間に原子力施設の関係自治体に渡った四百数十億 円の寄付マネー。施設の拡充などで地元の理解を得たい東電と、その財布に 頼った自治体とのもたれ合いは長年続いた。財政問題の専門家は『不明朗な 資金運用は、地方自治の観点から望ましくない』と問題視している」
「財政問題の専門家」が「不明朗な資金運用は、地方自治の観点から望ましく ない」といったそうだが、何故「望ましくない」のか不明だ。しかし、公的機関 に対する不明朗な寄付行為は、民主主義の観点からまずいだろうから上で述べた ような方法で是正すべきである。
しかし、原子力関連施設を引き受けてくれる地方自治体にとっても何らかのメ リットが当然の見返りとして必要だろう。やはり原発は、電源開発と地域開発と の共存共栄が図られてこそ、存在意義があるといえよう。
「原発が安全なものなら電力の大消費地である東京に建てればいいではないか」 という意見がある。そしてまた「安全とはいえないから過疎地の地方にもってく るのであろう」とも・・・。
安全だと断言して説明してきた我々は、原発を東京などの大消費地に建てるこ とをよしとせず、発展が少々遅れている地方に建てる理由をこう説明している。 原発を大消費地に建てることは、電源開発には役立つが、すでに発展してしまっ ている大都市に原発を持ってきても、その地域開発にはあまり役立たない、と。