「電力自由化で原発は新設できない」
<その4>
自由化時代に「国営」原発? 確かに原発には、石油価格が高騰する可能性を減少させるという”長所” がある。だが、その一方で、原発が生み出す猛毒の「放射性廃棄物」が環 境への負荷になるばかりか、原発が航空機テロなどの標的にされる危険と いう、抜き差しならない問題点を抱えているのもまた、事実なのだ。 |
このルポライター氏が認識している原子力の長所は、石油価格の急騰を押さえること・・・これだけと思っているのだろうか?
日本のエネルギー政策は、これらの「長所」と「短所」を天秤にかけた 上で決められるものでなけれぱなるまい。ところが残念なことに、今回の 矢島リポートではそこまで検討されてはいない。矢島氏はこう説明する。 「私はあくまで、自由化をした時、原発の新設にどのような影響がある のかという議論をしているわけです。そして、新設は難しいということを、 一つの結論として言っている。そして、難しいのだったらどういう支援が 考えられるのか、という話をしているわけで」 |
−−原発を今後も存続させていくという前提に立った場合、「自由化す べきでない」という結論になりそうですけど。 「自由化をしないというのは、一つの選択。もう一つの選択は、国がそ んなにあと10基とか13基とかの原発を造りたいのであれば、電力会社 ではなく、国がやればいいじゃないかと。 つまり、フェアじゃないですが、民間の電力会社が原発をやるよう義務 づけて、そのためのコストはすべての需要家から徴収するか、もしくは税 金を投入するという考え方ですね。 でも私は、自由化をしないで分散型電源(注)の開発を急いだほうが、 長期的に見たら政策としては賢いと思いますが・・・」 |
「国の政策で自由化と原子力推進を同時に進めたいなら、いままで通りに民間の電力会社では非常に難しくなります。それでも自由化を取り止めないで原子力も進めなければならないなら、原子力を推進するための何らかの強力な擁護策を考えなければならない」ということである。
そして、「自由化を急がないで、原子力も押し進めながら、分散化電源の開発を奨励して急がせた方が、小資源国、日本の将来のエネルギー政策にとっては賢い選択だと思います」と、矢島参事は至極もっともな説明しているのだが、このルポライター氏はどの程度理解しているのか、不安が残る。
こうして、原発はついに”黄昏”の時代へと突入していったのだった。 NGO「原子力資料情報室」の西尾漠氏は語る。 「今では発電など、いくらでも新規参入できる仕事になった。だから原 発だけを特別扱いする理由は何もない。無理やり原発に競争させようと思 えば、コストを削れるところは今や「安全性」のところだけ。しかしその 結果、浜岡原発のように事故を起こしてしまえば、かえって経済的に余計 マイナスになる。それに今後、電力会社の中には自由化で買収され、”消 滅”してしまうところもあるだろう。 そんな、何が起きても不思議ではない時代に、造るのにも時間がかかる し、後始末にも時間がかかる原発みたいなものは、まず生き残れないでし ょうね」 |
我々が使っている電気の約40%を原発にお世話になっているというのに、それを「黄昏」にもっていって、このルポライター氏や、反原子力派のリーダー、西尾氏らは、これからの日本のエネルギー政策や環境政策をどうするべきだというのだろうか、まったく見えてこない。
「原発」と「自由化」は両立しないとうたった今回の矢島リポートを、 「原発の新設推進に消費者の追加支援を求めたもの」 と”好意的”に見る向きもある。が、恐らく国や電力会社も本音では原 発から撤退したいのだろう。そうでないとすると、「思慮が足りない」と 言うほかない。 |
このルポライター氏に指摘されるまでもなく、原子力など伊達や酔狂ででやれるものではない。それでも必至でやっているのは、経営者として「思慮が足りない」のでは決してない。国の経済の屋台骨を支えているという責任感で、原子力発電は最良の発電システムと判断し、建設、運転、管理に日夜一生懸命に取り組んでいるのである。他に何があるというのか?
「G研」代表