「サンデー毎日」2002年1月6日・13日

  電力中央研究所リポートの衝撃度

       「電力自由化で原発は新設できない」

<その3>

「自由化」は原発の敵!                      
                                 
 ところが、すでに電力自由化を実施した国々を見てみると、原発の新設
が全然できていないというのが現状だ。自由化先進国・アメリカでは原発
新設の動きはあるものの、それにしても従来の100万キロワット級軽水
炉ではなく、新しいタイプの11万キロワットほどの「小型炉」である。
 「これであれば投資リスクも小さいし、国民からの承諾も得やすい、と
いうことです。ただ、これにしても経営者によって建設するかどうかの判
断は異なっている」(矢島氏)                   
 自由化が進むと、当然、20年先、30年先を見越して投資する奇特な経営者はいないだろうと、容易に想像できよう。矢島氏の説明は至極もっともな話で、我々も同じような答をしただろう。

 イギリスも、自由化してからは新設された原発がない。原発の建て替え
をやらない限り、25年後にはイギリスの原発はわずか1基だけになると
いう。それどころか、英国内で原発を抱える電力会社「ブリティッシュエ
ナジー」が存続できなくなるとして、原子力陣営の危機感は募る一方のよ
うだ。ドイツに至っては、約20年をめどに国内すべての原発を廃止する
「原発全廃法案」が連邦議会(下院)で可決され、成立はもはや時間の問
題。では、このような事態に陥った理由は何なのか。         
 欧米において原子力をスローダウンさせる選択は、この自由化ばかりが理由ではないが、総発電量の70%以上を原子力で占めているフランスを除いて、新規の原子力発電の建設が難航しているのは事実だ。

 「原発が安いとか高いというのは、火力発電と比較しての話なんです。
重要なのは、将来の化石燃料(石油など)の価格がどうなるかということ。
そしてそれは、誰にも分からない。このように、どちらをやれぱいいのか
判断がつかない場合、経営者は原発をやるかどうかの判断を先送りし、当
座の需要増加に対しては小型の電源を造ることによって対応するようにな
る」(矢島氏)                          
 何ら問題発言ではない。専門家筋では分かりきっている事実である。

 「親方日の丸」的な時代とは違い、自由競争の波に晒された時、経営者
は何十年も先のことを考えて元を取ろうなどとはまず、考えない−−とい
うのである。だから、造るのに10年単位の時間がかかる原発にはなかな
か手が出せなくなるわけだ。                    
 「親方日の丸」的な時代、というのは何を意味するのか不明だが、戦後の9電力体制のわが国の電力体制が始まったときから自由化が始まったときまでを称して「親方日の丸的時代」というなら、また、日本の電力会社が旧国鉄のような放漫経営を意味するなら、それは大きな間違いである。

 分割民営化された「9電力体制」は、むしろ旧国鉄を解体し、分割民営化された時のお手本になった事実からしても、「親方日の丸」ではない。日本列島の市場を9つに分割し、9つの電力会社以外誰も電力事業に参入できない代わりに、供給義務を負わされていたのである。

 また、9つの電力会社は、国のエネルギー政策を遂行する上で、最も良き理解者であり、協力者であったのだ。だから、困難な黒四ダムにも挑戦したし、原子力だって、身銭を切って技術者を育て、地元への説得も率先してやってこれたのである。

 それを「親方日の丸的」という表現しかできないルポライター氏と、こういった低俗な記事を掲載した「サンデー毎日」編集者の認識不足に、いまさらながら驚くばかりである。

 それに加えて将来、原発に取って代わる有望な発電システムが登場して
くるかもしれないというリスクもある。これらのことを合理的に考えれば、
米英の電力会社の経営者が原発を敬遠するようになるのも、至極自然な 
「風潮」であろう。                        
 将来の有望な発電システムを密かに期待して待っていられるのは、いま、世界的に不景気で、電力需要の落ち込みを意味していることを忘れてはなるまい。

             (次に続く)