菅政権のブレーンである内閣官房参与の前田匡史氏(国際協力銀行国際経 営企画部長)が、国内全原発の国有化を提案している。東京電力の原発事故 に伴う損害賠償も視野に入れた提案で、政権で今後、議論される可能性があ る。前田氏に狙いを聞いた。 ◇ まえだ・ただし 東大法卒。82年日本輸出入銀行(現国際協力銀行)に 入り、資源金融部長などを経て、国際経営企画部長。10年6月から内閣官 房参与を兼務。53歳。 |
−−なぜ原発の国有化が必要なのですか。 「原子力発電は国有の原発会社が担うべきだ。国が前面に出て責任を負う ことが重要。国有会社は電力各社から原発部門を買い取り、東電などに電気 を卸売りする。得た利益を原発事故の賠償に充てれば、電気料金の値上げと いった国民負担は最小化できる。電力の安定供給にもつながる」 −−今の体制では、賠償も安定供給も難しいということですか。 「原発の発電コストは1キロワット時あたり5〜6円。これまで安価で発 電できる優良資産とされてきたが、今回、事故が発生すると賠償や事故対応 の債務は、想像を絶する金額になることがわかった。これでは民間で原発を 運営することは難しい。巨額の賠償を負ったままでは、新エネルギーへの投 資や、送電網の整備もままならない」 −−定期検査中の原発の運転再開が滞っています。国営だとどうなります か。 「運転再開できないと、来年前半には全原発が止まる。電力不足は深刻化 し、経済には大打撃だ。原発を国が担えば、再稼働の判断は地元自治体だけ ではなく、国の責任となる。いまは国の姿勢があいまいだから、国民は不安 なのだ」 −−国有原発会社が賠償の主体になれば東電が賠償から逃れることになり、 責任があいまいになる。 「東電を免責するわけではない。東電は、国有会社から電気を調達しない と電気料金が上がるので、買わざるをえない。電気を売る前提として、東電 にリストラや経営改善を義務づければ、責任を明確にすることは可能だ」 −−国有原発を国が規制する点に問題は。 「原子力安全・保安院が経済産業省から独立し、牽制(けんせい)する関 係をきちんとつくれば問題ない」 −−実現しそうですか。 「政府の『東電に関する経営・財務調査委員会』で議論していいと思う。 私は委員会にアドバイザーとして同席しており、一石を投じる意味で提案し ている」 (聞き手・福田直之) |
■政権のブレーン■重み持つ「私案」 政府の賠償支援の法案は、東京電力の姿を変えるところまでは踏み込んで いない。前田匡史氏が唱えるのは、電力供給の基礎部分を担う原発の分離。 発送電分離につながる可能性もあるため、大きな議論を呼びそうな提案だ。 原発の国有は、世界的には珍しくはない。フランスやロシアは、政府系の 企業が原発を担う。国有会社が福島第一原発事故の賠償にあたれば、東電に よる電気料金の値上げは避けられるかもしれない。 しかし、国有会社が賠償をまかなえないと、財政支出の形で国民負担が生 じかねない。国有化には、厳密な制度設計が求められる。 与野党の一部には、賠償に国の関与を強めるべきだとの意見も根強い。さ らに、前田氏は東電の資産を査定する経営・財務調査委員会のアドバイザー。 親交が深い仙谷由人官房副長官が委員会のまとめ役だ。国有化論は私案とは いえ、重みを持つ。 |