<その3>

<社説>===[温暖化防止]

         批准に向けた仕上げを

                  朝日新聞(2001年10月29日)


 米国の離脱によって日本の参加が議定書発効のカギを握ることから、ボ
ン会議で欧州側は大幅な譲歩をした。二酸化炭素の森林吸収分の計算につ
いて日本の要求をすべて認めたのである。              

 国内の森林による削減効果は3.8%まで、途上国への植林援助による
削減効果は最大1%まで算入される。6%という削減目標の達成はずいぶ
ん楽になる。                           
 京都議定書が発効できるには、全地球からの温室効果ガスの50%以上を排出している国が参加していることが条件だから、最も排出量の多い米国が離脱すると、EU単独だけではもちろんのこと、EUとロシアだけでも50%に達しない。そこに日本が加わってはじめて京都議定書が成立する条件は揃うのである。

 だから、是が非でも成立させたいEUは、日本にアメをしゃぶらせる戦術に出てきた。つまり、それまでは拒否してきた二酸化炭素の森林吸収分を日本の要求以上に譲歩してきたというのである。

 われわれはそのようなまやかしにだまされてはいけないと思うのだが、環境省当たりは、自分たちの精力的な交渉の成果だとしたいようだ。

 それなのに、日本政府は「議定書を02年に発効させよう」とはいうだ
けで、批准について態度を明らかにしていない。           
 EUと同様、朝日新聞もまた、日本政府に是が非でも「京都議定書」を批准させたい意向であることは、この文章から明白である。

 議定書に復帰するよう米国を説得することが先だという姿勢だったが、
近い将来の復帰は考えられない。米国が代案をCOP7に出すという期待
も消えた。態度決定を先送りする理由はないはずだ。         
 EUのみ有利で温室効果ガス排出量削減にはほとんど効果を発揮しない京都議定書より、原子力発電の存在意義もしっかり盛り込んだ新しい議定書案が米国から提起されるまで、待ってから判断しても遅くはない。重要なことは、地球温暖化防止に役立つ国際ルールが盛り込まれた議定書にわが国が参加することである。

 政府の一部や産業界からは最近、後ろ向きの発言が相次いでいる。経団
連は「02年の発効に固執することなく、米国を含む国々が参加できる枠
組みを目指すべきである」といった声明を出している。        
 経団連の発言が「前向き」なのであって、原子力反対を影の目標として、温暖化防止にはあまり効果を発揮するとは思えない「京都議定書」の批准を急がせる朝日こそ、日本の環境政策にも、またエネルギー政策、ひいては経済政策にも「後ろ向き」な発言なのである。

 「90年の排出量を削減の基準にするのは不公平だ」などと、何年も前
に決着した議論の蒸し返しさえある。                
 「不公平」である事実、それを証明する新たな事実が見つかれば、何度でも議論し、是正することが肝要である。それを「一度決めたことを蒸し返すのは問答無用」といった発言は、うしろめたさを隠ぺいする方便にもとれる。

 不景気なのでコスト増につながることは先延ばししたいという気持ちは
分かるが、それでは欧州企業に後れをとり、国際競争力を失う。むしろ積
極的に温室効果ガス削減の技術開発を進める方がよい。        
 国の地球温暖化防止策と、企業の国際競争とはまったく次元が違っている。むしろ、京都議定書を完成させ、不利な日米を押さえながら、国際競争に勝ち抜こうというEUの魂胆が見えかくれしていることに、大新聞、朝日は気がつかないのだろうか? それとも、EUから世論操作に協力を依頼されているのだろうか?

 政府は、批准の意思をはっきりさせてCOP7を成功に導くべきだ。そ
して、来年の国会で議定書を批准できるよう、削減目標の達成に必要な政
策や法律の整備に一日も早く取り組まなければならない。       
 同時テロへの制裁に忙殺されている米国、構造改革と景気回復に忙殺されている日本、そんな両経済大国の事情を知りながら、急いで批准に持って来ようとする主張は断固許されるものではない。しかもそれがEUの報道機関ではなく、日本の報道機関であることに不思議に感じざるを得ない。

            「G研」代表