■このG情報に異議あり■
「原発から40キロ離れ恩恵を受けていない。いただいたのは放射能だけ」と はどういうことか、理解できない。とくにおっしゃっている「恩恵」とは何なの か?
今回の原発事故の原因は「想定外の津波」に襲われたことであるのははっきり している。マグニチュード9.0というとてつもない地震、それによって引き起 こされた高い津波を国の防災政策に基づき長年調査研究してきた地震学者といわ れる専門家が的確なアドバイスをしなかったが故に東北三県の太平洋沿岸に位置 する村や町がことごとく破壊され、死者および行方不明者合わせて約2万5千人 という我が国の災害史上最大級の被害をもたらせたその東日本大震災の調査・検 証は何時するつもりだろうか。福島第一原発の事故原因も大震災の原因も同じ津 波である。
「調査にあたる事務局は30人弱の体制。4人の検事のほか経済産業省や文 部科学省出身者も入り、出身省庁からの独立も課題だ」
福島第一原発を設計して建設したのは原子力発電プラントメーカーであり、そ れを運転管理していたのは東京電力であるが、それを建設する前の設置認可や工 事中の工事認可を下ろしてきたのは経済産業省や文部科学省であり、その許認可 申請の諮問を受け、答申してきたのは原子力安全委員会あるのだ。
事故調査・検証委員会の委員に原子力工学の専門家は入らず、またその事務局 に許認可担当省の出身者は入るが、メーカーや電力の出身者は誰も入らないでは あまりにも不公平ではないか。自己の責任を「民会企業」に押しつけるための調 査・検証委員会であろうと勘ぐりたくもなる。
「『調査は世界が猛烈に注目している。国際的な信認が得られるかどうか、 国の信用にかかわる』。菅直人首相は初会合の冒頭、検証委の役割が、事故 後に巻き起こった「日本不信」の払拭(ふっしょく)であることを強調。 『私自身、被告といったら言葉は悪いが、出席しろと言われれば出席する』 とも述べ、調査対象に例外がないことを付け加えた」
「世界が猛烈に注目」しているのは、一日も早い事故の収束であって、事故が 収束しないうちの不完全な調査レポートではない。そのような物が必要なら、先 日来日して自ら調査していったIAEAのレポートで十分なはずである。
菅首相が初会合に出席して「自分も被告の一人」といった発言で、いかにも事 故に関わった総理の振る舞いも調査・検証の対象になっているかに見せているが、 このような事故調査・検証委員会をあまりにも早く、しかも総理官邸の影響力が 発揮できる内閣官房においたことが、まやかしを証明しているようである。
「震災翌日の水素爆発の公表遅れ、各国に十分な説明のないままの放射能汚 染水の放出、『レベル7』への引き上げの遅れ−−。政権が発した情報と発 信姿勢は海外で疑問を持たれ、日本の信頼は傷ついた」
こういった項目に関して調査・検証するためには、福島第一の所長をはじめ現 場で今なお働いている作業員の証言が必要不可欠であろう。そのためには現場の 作業を中断して東京まで出張させ、証言をさせなければならないのではないか。
ここで調査しなければならない項目は、官邸や規制当局が余計な口出しをして 事故収束の作業を遅らせたのではないか、といったところだと思われるが、こう いったテーマについて公正に調査・検証するにはあまりにも不適切な委員会であ り、同事務局であるといわざるを得ない。しかも同委員会の所属が国会など公正 なところではなく、内閣官房の管轄下におかれていること自体、胡散臭いといわ ざるを得ない。
「国際的な信頼を取り戻すには第三者による調査で事故原因を調べ上げ、原 発の安全技術の進歩に役立てることが不可欠だーー。5月末、G8サミット のスピーチで首相が『最高度の原子力の安全を実現するために調査委員会を 立ち上げた』と強調したのも、そんな思いからだ」
「最高度の原子力の安全を実現するために調査委員会」ならなおさら原子力工 学の専門家によって構成された委員会でなければ実現不可能だ。
日本の原子力工学の専門家は信用ならないというなら、IAEAの調査チーム に依頼するとか、アメリカのNRC(原子力規制委員会)などに調査を依頼する 手もある。いずれにしてももっとじっくり検討した上で、このような委員会を立 ち上げるべきである。
退任が間近に迫っているという菅総理が何故このような委員会を急いで立ち上 げたか、自分が退任した後の立ち上げになると、自分に不利になる検証結果が出 るかも知れないと恐れての振る舞いとしか思えない。
「首相は検証委に『過去の原子力行政の見直し』という重い任務も課した。 電力会社と行政当局が密接にからむ『原子力村』にメスを入れるとともに、 自民党政権下の原子力政策の問題点を突き、民主党政権との違いを浮き彫り にする思惑も見え隠れする」
過去40年以上の長い原子力行政の中で、たったの2年間の民主党政権におけ る原子力行政−−そのようなものがあったとしたら−−の違いなど浮き彫りにし ようも、またその価値すらないのではないか。
「調査結果の信頼度を高めるには、検証委に法的根拠を与えて独立性を確保 する方法があるが、ねじれ国会では法案成立の確証はない。政権は閣議決定 により内閣官房に調査委を設置して独立性を保とうとした」
先が見えている政権の「閣議決定により内閣官房」に設置した「調査委」には 「独立性」も公平性も皆無と指摘しておこう。独立性と公平性を持たせたいなら、 せめて国会が承認した委員で構成した「調査委」で、しかも国会の管理下に設置 すべきであろう。
「検証委は首相の早期退陣が避けられない情勢での船出となった。枝野幸男 官房長官は7日の会見で『(調査は)政府として閣議決定してお願いしたの で、厳しい検証がなされる』と述べ、次の政権の動向が調査に与える影響は ないとの見方を示した」
「次の政権の動向が調査に与える影響はない」と考えるのは、現政権の官房長 官の希望的観察であろう。現政権の閣議で決定した調査委なるが故に、事故に当 たった現政権事態をも調査・検証の対象にせねばならないから、次期政権や国会 は別の調査委を新たに立ち上げねばならなくなるだろう。
「G研」代表