<その2>

<社説>===[温暖化防止]

         批准に向けた仕上げを

                朝日新聞(2001年10月29日)


 で、二酸化炭素ガスの排出量を減らすための方策として、第一に省エネに努める、第二にエネルギー効率を上げる技術開発を進める、第三に化石燃料に替わる燃料を使用する割合を増やす、の三点に集約される。

 第一の省エネだが、エネルギー多消費のライフスタイルや経済構造を変えていかなければならないといった議論があるが、精神論の部分が多分にあるため、システム的に進めるのはなかなか難しい。

 第二のエネ効率の向上技術の開発だが、わが国はこの分野が最も得意とするところで、世界をリードしている。この分野は他国への技術移転などでかなり貢献できるであろうが、その貢献がわが国の削減目標の算定にどの程度加味できるかがカギだろう。

 第三の代替エネルギーだが、二酸化炭素ガスをほとんど出さない原子力発電というすでに確立されたシステムが存在しているが、何故か環境保護論者の一部に原子力を排除する人達がいる。地球温暖化に危惧する反原子力論者と、同じく地球温暖化を危惧する親原子力論者との歩み寄りこそが、最も効率的な地球温暖化防止策なのである。

 しかし、7月にボンで開かれたCOP6再開会合ではこの危機感がバネ
となり、長年の対立点だった排出量取引など削減の仕組みの運用ルールに
ついて骨格の合意ができた。各国は米国抜きでも発効をめざすという政治
的意思を示したのである。                     
 一連のCOP会議では、環境保護派に牛耳られたEUの代表は、原子力が、温室効果ガスの排出を最も削減する方策であることを口では認めながら、各国の削減量の算定には原子力を無視するルールで押し通そうという魂胆が伺われる。

 そのことに気付いた米国は京都議定書から離脱したのだが、日本は、その京都議定書を採択したときの議長国であることから、いまさら異議をあからさまに唱えることができないままでいる。

 今回のCOP7の目的は、このボン合意の細部を詰めて法的拘束力のあ
る文書に仕上げ、採択することである。それで運用ルールが確定し京都議
定書は完成する。あとは各国の批准を待つことになる。        
 京都議定書が完成すれば、EUはものすごく有利であることは、このG研でも何度も指摘してきた。再度指摘しておこう。

 京都議定書に盛り込まれた削減目標の基準年は1990年で、その時点でのEUは、環境政策などは大幅に遅れていた東欧諸国との併合が行われていた時代であり、温室効果ガスの排出量も非常に多いときであった。EUがその時点を基準にして削減するのは容易である。

 だから、彼らは、京都議定書が地球温暖化を防止することに効果を発揮するかどうかよりも、まやかしの防止策を決めてしまおうという魂胆である。もう一つの魂胆は、地球環境にも国の経済にも有利な原子力発電の開発がこれ以上日本などで進められるのを何とか阻止したいのではないかと思われる。

 具体的には、排出量取引などの柔軟措置や森林の二酸化炭素吸収量の算
定法、削減目標を守れなかった場合の罰則などを、ボン合意に従って文書
化することだ。細かいところではなお対立が残り作業量も多いが、建設的
な交渉を望みたい。                        
 建設的な交渉などあるはずもない。地球温暖化防止というグローバルなテーマを論じながら、各国の思惑が入り交じったどろどろした交渉が渦巻いている。これは、1930年のロンドン軍縮会議の様相に似てきている。最近では捕鯨交渉にも似てはいないだろうか。

           (次につづく)