■原発神話から脱する
電力需要は戦後、ほぼうなぎ登りで増え続けてきた。高度成長が終わり、
安定成長を迎え、デフレ経済といわれるようになっても衰えをみせなかった。
一世帯当たりの月間電力消費量も1970年の3倍近くに。エアコンにパ
ソコンにインターネット、トイレの便座・・・。電力は暮らしを支えた。オ
ール電化なる言葉もあった。
その電力供給が滞るなど、ほとんどの人が想定しなかった。
原子力は優等生に見えた。「国際情勢の影響を受けず安定供給できる」
「石油と違い二酸化炭素(CO2)を出さない」として電力全体の3割を担
い、さらに増やす計画もあった。
慢心が生まれた。旧ソ連チェルノブイリや米スリーマイル島のような深刻
な事故は、日本では起きないという不倒神話だ。
2004年12月、大地震に伴うインド洋大津波という前例があった。福
島原発の周辺地域でも、過去に大津波が襲来したという指摘もあった。しか
し結果としては無視されてきた。そして「想定を大きく超える津波」(清水
正孝東京電力社長)に、原発はあまりにもろかった。
歴史に学ぶのは難しい。日本がしたたかに味わった苦い経験を思い出す。
90年代以降に頻発した多くの金融破綻(はたん)である。
それまで銀行はつぶれぬものと言われた。起きてはならないことは現実に
起きない。だから国有化や公的資金注入の仕組みもなかった。しかし、あり
得ぬことが現実になって最悪に備えた制度や法律が整備された。
神話を捨て、現実を見据えるほかなかったのだ。
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