シャロン・スクアソーニ氏の意見
(米国の戦略国際問題研究所(CSIS)核不拡散プログラム・ディレク
ター。国務省で核不拡散問題などを担当した)
原子炉内の情報がつかめないなかで、四つの原子炉で次々と事態が進行し
ていることは、当局や東京電力にとって非常なプレッシャーに違いない。日
本の作業員らは、破滅的な結末を避けようと英雄的な行動をしていると思う。
どこの国であろうと対応するのが大変な事態だと心配している。
事故を詳しく評価するには時期尚早だ。未来を見通すことはできず、福島
第一原発の事態の進展も予測できない。ただ、日本国民のためにも、政府が
福島第一原発の原子炉を安定化できるよう望んでいる。
もちろん福島の事故は、チェルノブイリ原発事故とは性質が違う。しかし、
チェルノブイリでは今でも放射性物質の除去作業などが続いているのが現実
だ。
たとえ福島の事故を終息させるのに成功しても、日本でも、今後、何週間、
何か月にわたって政府は撤去作業などに当たらなければならないだろう。こ
れは一時の危機ではなく、長期間にわたって持続する危機だ。
まだ正しく評価するのは難しいが、周辺住民の避難に時間がかかったスリ
ーマイル島原発事故と比べれば、福島での政府の早い避難措置は正しい判断
だったのではないか。海水を注入するという東電の決断も、原子炉が使えな
くなるかもしれないが正しいことだろう。
水素爆発を防げなかった点には疑問が残る。四つの原子炉が似たような経
緯をたどっており、爆発の被害を緩和する何らかの措置が取れたかもしれな
い。しかし、事態の進展が速く、予期できなかったのだろう。
米国の原発も、4〜8時間ほどで電力は復旧するとの前提にたっており、
長い寿命の電池は備えていない。福島第一原発の事故は、東電固有の問題で
も、日本固有の問題でもなく、原発共通の問題と言える。
この事故から我々が学びとるべき教訓は、地震や津波とも関係なく、「冷
却系は極めて強固にし、無傷でなければならない」ということだ。世界中、
どの電力会社も完壁ではない。今後、各国の安全基準が影響を受けるだろう。
原子力発電の推進は、一般国民の支持が頼りだ。近年、米国をはじめ、気
候変動問題の解決策として二酸化炭素を排出しない原発が脚光を浴びてきた
が、この膨らんだ熱狂も立ち消えになると思う。
しょせん原発も、高度な技術と膨大な費用で水を沸騰させる発電方法にす
ぎないということだ。恐怖から、一般国民は原発を排除するようになるかも
しれない。
だが、日本人は立ち直る力がある。簡単な処方せんは示せないが、電源を
多様化するなど何らかの方法で、日本も米国も原子力発電を続けていくだろ
う。気候変動への影響を考えれば、米国とて石炭をすべて燃やして発電に回
すことはできない。 (聞き手 ワシントン 山田哲朗)
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