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日本経済新聞(2010年12月29日)


<経済教室>


[ポスト京都議定書の課題(下)]


  途上国参画へ誘因さらに


                 澤 昭裕(21世紀政策研究所研究主幹)



(その4)


   <本文転載>



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                                                         このように、新しい枠組みを構築する要素はそろってきた。しかし、問題  は検討期限についての今回の決定だ。今回のCOP決定では、新しい法的な  枠組みの検討をいつまでに完了しなければならないかといった制限は規定さ  れていない。一方、同時に採択された京都議定書締約国会合決定(CMP)  では、第1約束期間と第2約束期間の間に隙間ができないよう検討作業を完  了させる努力をすることになっている。第1約束期間が12年で終了するこ  とを考えれば、検討期限の努力目標は来年12月のCOP17となる。これ  は京都議定書の延長を支持する途上国やEUにとって有利な交渉材料となる  だろう。                                                                     来年に向けて、京都議定書延長支持各国の動向には変化はないだろう。途  上国は、自分たちに削減義務が課されない京都議定書の固定化は大歓迎だ。                                       またEUにとっても、京都議定書はこれまでEU主導で温暖化国際交渉を  リードしてきた成果だとして、一種の象徴的意味を持っている。さらに実利  的にも、同議定書のもとでは、域内各国全体で削減義務を達成すればよいと  いう特例(「EUバブル」)が認められ、削減量にゲタを履ける有利な基準  年(1990年)が使える。域内排出量取引市場(EU−ETS)への悪影  響を回避するためにも、現状唯一の法的枠組みである京都議定書は必須の存  在である。                                                                    日本の立場に共鳴したロシア、カナダ、オーストラリアなどは、そう簡単  には京都議定書延長に賛成しないだろうが、最大の排出国であり政治大国で  ある米国は、脱退した京都議定書には無関係だとして、議論に参加する見込  みはない。こうした状況では、来年のCOP17でも、今年と全く同じ状況  が現出することは容易に想像できる。                                                        そのうえ、上に見たように検討期限が迫ってくるため、日本が京都議定書  第2約束期間の設定を拒否しようとすれば、今年よりもさらに大きな外交的  圧力がかかってくる。拒否を貫く政治的決断はますます困難な選択肢となっ  てこよう。日本はCOP17までの1年間、温暖化外交の正念場を迎える。  道理に根差した次期枠組み構想を示し、国際社会を説得していくことが求め  られる。                               



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                                                         第一に、米中を含んだ今回のCOP決定をさらに強化する。その「強化さ  れたCOP決定」は、気候変動枠組み条約の目的達成のために最適な枠組み  だと明確に位置付け、最終作業の完了時期を明示する。その中では、各国が  実効的な温暖化対策を実施しているかどうかを多国間で監視することに重点  を置く。先進国の中で、目標数値に比べて取り組みが遅れている国に対して  は、当該国の数値目標達成のために必要な追加的政策を取るよう勧告する仕  組みを取り入れる。                                                                第二に、途上国支援に関しては、現在日本政府が注力している2国間クレ  ジット(排出枠)制度の実例を、可能な限り多く成立させることは重要であ  る。しかし、同制度はプロジェクトごとの支援にとどまる。今後は、途上国  の国別削減行動計画のうち、一定の政策分野全体を支援していく仕組みに発  展させていくとともに、支援対象も、今回のCOP決定に含まれている人材  育成などのようなソフト的インフラにも拡大すべきである。また、京都議定  書では視野に入れていない「温暖化への適応」に対する支援策を積極的に打  ち出すことで、最貧途上国に新たな枠組みの必要性を認識してもらうことも  重要である。                                                                   第三に、京都議定書については、今後一切、第2約束期間の設定議論に参  加することは拒否する。一方で、京都メカニズムなど京都議定書に規定され  ている数値目標以外のルールについては、2国間クレジットシステムなどと  並行して、右の「強化されたCOP決定」に吸収していく工夫を検討する。                                       一つの新たな法的枠組みを目指すこうしたアイデアを、日米協力を基軸と  してアジア太平洋経済協力会議(APEC)各国に対して説明し、賛同国を  増やしていくべきだ。さらにその過程で、国連の枠外で作る有志国連合を構  想することも一つの案である。                                                           しかし、この外交を成功させるには、日本政府は「2020年に1990  年比25%削減」という現在の数値目標を柔軟化しなければならない。その  目標を国内対策だけで実行することは不可能だと見て排出枠を日本に売ろう  と狙っている国の目には、京都議定書に代わる枠組みに移行することは損だ  と映ってしまう。                                                                 また「日本は25%削減達成が無理だから京都議定書から逃げようとして  いるのだ」という道義的な批判を受けかねず、松本龍環境相が発信した「新  たな枠組みでなければ地球を救えない」という大義を疑われる危険がある。  COP16が終わった今となっては、皮肉にも「民主党が政権公約(マニフ  ェスト)に書いた25%削減の旗を降ろせないから日本は地球を救えない」  という状況になってしまっている。                                                         外交戦略と国内対策とを集合的に進めていくべく、国家戦略室に「ポスト  京都議定書構想検討会議」を設置することを進言したい。複雑な温曖化交渉  に関して、首相が誤りなき判断を行えるようにするため、官民の英知を集め  て構想と戦略を練るのがその狙いである。                                                      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜                  さわ・あきひろ 57年生まれ。プリンストン大行政学修士。専門は環境  政策