読売新聞(2001年7月3日)

<社説>

   [エネルギー]==炭素税をめぐる議論も始めよ

<その3>


 このため調査会は、省エネの目標を現行の原油換算5千万キロ・リット
ルから5千7百万キロ・リットルに引き上げた。           
 京都議定書の公約を守るのに最も役立つ原発を減らし、最も邪魔になる石炭を増やさざるを得ない、止むに止まれぬ状況下で、残された方策は消費量を減らす「省エネ」の目標を引き上げることとした総合資源エネルギー調査会の結論もすんなり受け入れている。

 現行の14%も引き上げるという省エネ目標など、絵に描いた餅に過ぎないが、原発をこれ以上増やせないなら、数値合わせで省エネの目標値を上げておく以外ないのだろう。

 期待の新エネルギーは、発展著しい風力発電の供給目標を現行の十倍の
3百万キロ・ワットにするなど、拡大を図った。だが廃棄物発電など下方
修正が必要なものもあり、全体では原油換算千九百十万キロ・リットルと、
現行と同量にとどめた。                      
 いくら「発展著しい」といっても風力を現行の10倍に増やすというのは行き過ぎではないか。これも、心ある社説なら、警告を発するくらいはしておくべきだろう。

 それでも、目標達成は容易ではない。省エネでは、エネルギー利用効率
の高い自動車、電機製品を公表し、他社に追随を促す「トップランナー方
式」の拡充を提案しているが、効果は未知数だ。           
 そう、今回の「長期エネルギー需給見通し」には「未知数」があまりにも多すぎる。原発の増設を「未知数」にしない強力な手だてはなかったのか?

 新エネ開発では、風力、太陽光などコスト高だがCO2を出さない電力
について、電力会社の買い取り義務を強化する案を示しているが反対も少
なくない。                            
 電力の自由化を進める反面、コスト高の風力や太陽光等で発電した電力を買い取る義務を既存の電力会社に科することなど、できるはずがない。それこそ自由経済に反し、歴史の流れにも逆らうことになる。

 CO2排出量の削減は、既存の対策の拡充だけでは限界がある。ガソリ
ン税などを炭素税に組み替えた場合の効果はどうか。特定財源に見直し論
議が高まっている今こそ、検討開始の好機だ。            
 「既存の対策の拡充だけでは限界がある」と言明しておきながら、提案する対策が「炭素税」ではあまりにもお粗末である。

 経済が低迷している今、地球温暖化防止のために、エネルギーの消費者に新たに課税することは、不景気を長引かせこそすれ、二酸化炭素の排出を極端に抑えることに役立つことはない。何故なら、経済活動にはエネルギーの効率的な消費が不可欠だからである。

 エネルギー消費そのものを抑制する省エネや課税などより、CO2を出さないで安価なエネルギーの開発こそ、いま我々が取り組まなければならない課題である。

           「G研」代表