■このG情報に異議あり■
高速増殖炉の実用化は、ウラン資源の99.3%を無駄にしている現行の軽水 炉に替わって間もなく必要になってくることは自明である。ただ、プルトニウム の増殖率をそれほど上げなくてもいいなら、ナトリウムに代わる冷却剤を早急に 検討すべきであろうとは思う。
しかし、現時点ではナトリウム冷却がベストという長年の研究結果が出ている のだから、高速炉開発の主流はナトリウム冷却でいくしかない。その安全技術も ほとんどマスターしたと我々は見ている。
問題は経済性だが、新興国や途上国までが原子力発電所を希望し、天然ウラン のコストが高騰するのも事実だから、高速増殖炉に関わるコストも軽水炉と比較 してそれほど差がなくなるのも時間の問題であろう。
「制御棒不動作が起きれば暴走事故となって燃料が粉々に飛び散る危険性があ り、安全性、社会的受容性に欠ける」とは、長年原子力産業界のリーダーとして 君臨されてきた豊田さんのご意見とは思えない。本当にそう思っていらしたのな ら、「もんじゅ」の建設前に反対すべきだったのではないだろうか。
「そこで高速増殖炉実用化までのつなぎとして、ウラン燃料軽水炉から発生 するプルトニウムにウランを混ぜた混合燃料を軽水炉で燃やす「プルサーマ ル」が登場した。だが、ウランが中性子を吸収するため、プルトニウムは逆 にたまり続けて核拡散の問題があり、高レベル廃棄物も大量に発生する。ウ ランの代わりに、プルトニウムを全く発生させないトリウムをプルトニウム に混ぜた混合燃料の採用を検討すべきだ」
埋蔵量がウランより多いとされるトリウムを潜在核分裂性物質として活用する ことは、ウラン価格の高騰を牽制することや地球資源の有効利用の面から意義あ ることと考える。ただ、トリウムの利用は中濃縮ウランを使用するガス冷却炉に 適しているとされてきた。
それというのもトリウムは原子炉の中で中性子を吸収してウラン233となり、 これがウラン235やプルトニウム239と同じ核分裂性物質となって燃料とし て使えるのである。ウラン238とプルトニウム239を混合させた燃料を一つ のサイクルとして活用されているように、トリウムとウラン233を混合させて 核燃料サイクルは成立するが、そこに異質のプルトニウムを混合させた燃料では、 炉心管理も使用済み燃料の再処理もより難しくなるのではないだろうか。
我々はトリウムを利用するなら、高温ガス炉→ガス冷却高速炉の燃料として検 討し、軽水炉→ナトリウム冷却高速増殖炉の燃料としてはウラン−プルトニウム が適していると考える。
大先輩の豊田さんのような方が、重大な路線変更を軽々に提言すべきではなく、 提言されるなら、提言の前に十分に検討され、多くの元同僚や元部下にも打診し ておくべきである。
ただ、トリウムサイクルもそろそろその実用化を、原子炉の発電以外の利用方 法と併せて検討する必要があることは確かだ。
「さらに、高レベル廃棄物の最終処分の事業主体として、原子力発電環境整 備機構が00年に発足したが、処分候補地を公募方式だけに頼っていて、何 らの進展も見られていない。まず処分場の最適地を選び、知事や地域住民を 説得する方式を採るべきだ。また、青森・六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉 の不具合による度重なる遅れなど、大綱の前提が大幅に崩れてきている」
高レベル廃棄物の最終処分場に関する豊田さんのご意見にも異議を唱えざるを 得ない。
一昔前なら、電源立地に適した候補地を密かに探索し、それが見つかれば、今 度は地元知事や市長に電力のトップ自ら出向きお願いに上がるという、いわゆる 「ボス交渉」で何とか誘致してもらえることもあった。ところが最近ではこの手 法がなかなか使えない。地元のトップがOKしてくれているのに、住民投票して みたらひっくりかえったというケースがあちこちに出てきたではないか。
地下300メートルに建設する予定の処分場など改めて探す必要性はなく、例 を挙げれば東京都なら日比谷公園の下も最適地の一つに挙げられるではないか。 電力の大消費地である東京都が処分地の一つくらい引き受けるべき、といったご 意見を提言して欲しかったのである。
あえていえば、電源立地選定におけるシステムにまでメスを入れる提言をして いただきたいのである。
例えば、都道府県ベースでの電力は原則「自給自足」で、しかも温暖化ガスを 排出しない水力、原子力、自然エネルギーによる発電方式で賄うこと、それが物 理的に出来ない都道府県は放射性廃棄物の処分場や関連施設を引き受けること、 といった電力需給戦略を国会で法文化するといった提言というのはどうだろう。
安い原子力の電気はいいが、自分の町にはイヤだ、といういわば「総論賛成、 各論反対」をいつまでも許していては重要案件は遅々として進まないだろう。
「温室効果ガス2020年までに1990年比25%削減」などと大風呂敷だ けを広げているのでは地球温暖化を止めることは出来ないだろう。 小資源国日本のエネルギー政策もまた、表面上の民主主義を標榜していたので はその解決策は見つからないのである。
「G研」代表