朝日新聞(2001年7月1日)

   MOX燃料、やっぱり割高

      1トン当たり2億6千万円−−加工・輸送費−−

<その2>


 国は、MOX燃料を普通の原発で燃やすプルサーマル計画を推進しよう
としている。今回わかったMOX燃料の加工・輸送費(海外で作って輸入)
のデータは、同庁が99年12月に出した「原子力発電の経済性について」
という資料づくりで使われた。                   
 「今回わかった」という表現も不明確で、主語が欠落している。朝日新聞の記者が「今回取材して初めてわかった」のであって、「一般国民」ではないはずだ。知ろうとする一般国民ならだれでも「わかる」情報なのである。

 MOX燃料には、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウム
が必要だ。文書によれば、再処理費(国内を想定)は使用済み核燃料1ト
ンあたり3億5100万円。これを加味するとM○X燃料はより高くなる
が、同庁は「再処理はプルトニウムだけでなく、高レベル廃棄物を取り出
すなどの目的がある。単に加算しても意味がない」などとしている。  
 使用済み核燃料の再処理は、再生燃料を取り出すためだけのプロセス、つまり、バージン燃料のウラン鉱石を掘り出すなどのプロセスとはまったく違うから、その費用はMOX燃料のコストには加算しないのは当然であろう。

 ただ、核燃料サイクル費用は、放射性廃棄物の処理処分費用を含め、原子力発電原価の算定には当然含まれている。しかし、それは燃料の価格には入れる必要はないということだ。

 電力会社は、MOX燃料を使う比率などから「発電単価への最終的な上
乗せは1%程度。経営努力で吸収できる」と説明している。      
 経営努力でも吸収できない高価な燃料なら、いくら国策といえどもMOX燃料の軽水炉利用には協力できないだろう。いまや電力事業は自由化で競争原理が導入されているのである。

 ちなみに「発電単価への最終的な上乗せは1%程度」というのは、MOX燃料の装荷するプラントは16〜18基で、全国の発電所の約3分の1。また、炉心の約3分の1にMOX燃料が装荷されるので、原子力発電の約1割がMOX燃料と想定されている。一方、原子力発電の燃料費の発電原価にしめる比率は低く、約1割である。したがって、原子力発電原価の約1%が、ウラン燃料とMOX燃料のコスト差によって影響を受けることになる。

 一方、国の原子力委員会長期計画策定会議で委員を務めた吉岡斉・九州
大学教授(科学史)は、国内で再処理が始まれば、MOX燃料も国内でつ
くられる可能性が高いと指摘。「工業レベルの経験がないため、加工費は
より高額になる可能性もある」と話している。            
 この元委員の先生の真意はわからないが、朝日はこの先生のコメントを受けて何を言いたいのか、理解に苦しむ。

 上記の総合エネ調原子力部会で配られた資料と関係者への取材に基づき、素直に解釈すれば、次のような事実が判明するだろう。

(1)原子力の発電原価は5.9円/kWhとベラボーに安い。
(2)MOX燃料を使っても、その発電原価は高々1%程度上乗せするくらい。
(3)それは電気代を値上げしなくても経営努力で吸収できる。

 ところが、この記事はそういうことをいいたいのではなさそうである。MOX燃料は安くはない−−>再処理費用や国内加工費もいずれ上乗せするだろう−−>その値上がりは発電原価にも跳ね上がってくるだろう−−>消費者へ跳ね返ってくること必定−−>原子力関係者は経済性の悪化等の情報は国民に隠して原子力推進を図っている。

 おそらくこういうことをいいたいのであろうが、ではお聞きしたい。なぜ原子力関係者はこんな無理をしてまで原子力を押し進めていると考えるのか? 原子力産業界救済のため? ご冗談でしょう。そういうのを「下司の勘ぐり」というのである。

        「G研」代表