■このG情報に異議あり■
インドのような核兵器をすでに持ってしまった国は、核不拡散条約から脱退し て再加盟しようとはしていない。これを理由に、協力協定など締結すべきでない という意見ももっともな面もある。
しかし、だからといって日本が原子力平和利用に関する協力関係を構築しない で、インドに核兵器を放棄させる方法はあるだろうか。むしろ協定を締結した後 の方が、説得する機会を多く持てるのではないだろうか。
先の大戦中、アメリカは核兵器の開発に成功し、広島、長崎に原爆を投下した ことは日本人なら誰しも知っている。戦後も核兵器に直接関係する情報のみなら ず、あらゆる原子力関連情報をトップシークレットとしてアメリカだけが厳重に 管理すれば、他の国は核兵器の開発などに成功しないだろう、いずれ成功するに しても何年もかかるだろう、とアメリカは当時そう考えていたのである。
ところが戦後間もなく、ソ連、フランス、イギリス、そして少し遅れて中国ま でも原爆の開発に成功し、地球上で核実験が繰り広げられるようになった。水爆 なら大丈夫だろうと最初の成功者であるアメリカは思っていたが、これもまたソ 連、フランスなどが直ぐに成功させてしまった。
そこでアメリカは、核兵器の開発には手を染めないと約束する国には原子力の 平和利用に関する情報に限定して提供しようと、当時のアメリカのアイゼンハワ ー大統領は「アトムズ・フォア・ピース」と題する有名な演説を通して発表した のである。
この演説の趣旨を汲んで国際原子力機構(IAEA)という核兵器への拡散を 監視する組織をつくり、核兵器の開発はしないが平和利用の研究開発はしたいと いう国に核不拡散条約(NPT)への加盟を求めて来たのである。その発足当時 までに核兵器を所持していた五大国、つまり国連の安保常任理事国に限定し、そ れ以外の国には持たせないよう、監視組織と国際条約を制定したのである。
ところが、これら安保常任理事国や、核兵器廃絶を世界で唯一の被爆国の立場 から唱える日本などの願いに反して、五大国以外にもイスラエル、インド、パキ スタン、北朝鮮といった国が国際監視体制の縛りをくぐり抜けて開発を進め、つ いに成功させたのである。
厳しい監視組織や条約があっても、また、平和利用の原発が先行して所持して いなくても、また国家予算が極端に少ない発展途上国であっても、いとも簡単に しかも安価に核兵器を製造することができるようになったのである。
核兵器は、広島、長崎以外、無人の場所の実験目的をのぞいて、地球上に使わ れたことはない。いまのところ核抑止力が働いていると考えるべきであろう。
アメリカのオバマ大統領が「地球上に核兵器のない社会をつくろう」と呼びか けた。非常に結構なことだが、そのためには先ずあらゆる戦争、紛争をこの地球 上から排除しなければならない。そしてあらゆる武器が不要になれば、核抑止力 も不要になるだろう。つまり、核兵器は他のあらゆる兵器を廃絶した後に破棄す ればよい、というのが世界のリーダー達の考えのようである。
「しかし、核不拡散条約(NPT)に未加盟で核兵器を保有するインドヘの 原子力協力は、戦後日本が歩んできた核不拡散の基本政策を根底から覆すこ とになる。国民の多くは、日本が核不拡散体制の一層の形骸(けいがい)化 に加担してまで経済利益の追求に走ることを認めていないはずだ。国民への 十分な説明もないままでの協定締結交渉入りは暴走というほかない。政府は 方針を撤回し、交渉を停止すべきである」
と、ここで紹介する福永先生は力説されているが、もはや現行のNPTでは機 能しないケースが出てきたと考えるべきである。もうこれ以上「核不拡散体制の 一層の形骸化」させないためにも、新たなシステムが必要になっている。核燃料 の国際管理体制の新設など、現在議論されているが、それまでは日本も平和利用 に限定した協力を通じてインドと緊密なつき合いをすることに力点を置くことの 方がが世界平和により貢献できると考えるべきだろう。
「G研」代表