「朝日新聞」(2001年6月29日)

[社説]−−−−−−−−−−−−−「エネルギー需給」

      政府全体で取り組め

<その3>


 日本はもっと省エネ社会に向かわなくてはならない。そのことについて
はだれも異論があるまい。実現には日常生活から発電所の新増設まで、そ
の目標なら、そんな誘導策があるならできそうだ、と人々が考える計画を
示すことが大事である。                      
 おや、朝日が異な事をおっしゃる! 電気の需要がピークに達するのは、丁度高校野球の甲子園大会が開かれている「旧盆明け」のころとなっている。

 高温多湿の日本の気候で不快指数がグングン登るのは7月下旬から8月である。その期間に全国高校野球が開かれ、8月になると全国の地区予選で優勝したチームが甲子園に集まり熱戦が展開される。

 高校球児たちはもちろんのこと、地もとの応援団もこのときばかりは一団となって、気候の暑さ以上に熱くなっている。もう日本の夏を彩る風物詩になっていることに異議を唱えるものではない。

 しかし、この熱き高校野球が日本の電力需要のピークを押し上げていることは確かである。

 朝日新聞社が、「日本はもっと省エネ社会に向かわなくてはならない」と心底から思っているなら、この夏の高校野球を電力需要が谷間になるシーズンに移動させるか、少なくともテレビ中継を止めてはどうであろうか。冷房の利いた部屋で大型テレビを付け、冷蔵庫で冷やしたビール片手に、昼間っから野球観戦という、省エネとはほど遠い生活から日本国民を解放させることが先決ではなかろうか。

 今回の需給見通しは、2010年の削減目標を検討の条件にした。この
ため、柔軟性に欠けたものになったことは否めない。もっと長期で、無理
のない計画も併せて示してほしいところだ。             
 まあ色々無理難題をいいなさんな。まずは「京都議定書」に掲げられた削減目標は守ることができるかどうか、それを「現実」に沿って示したのであるから、これはこれでよしとすべきである。

 20年先、30年先のもっと長期の「見通し」は、一見「無理のない計画」だが、それだけ「不確定」な要素が入り、「絵に描いた餅」になりかねない。以前、そのように評価したマスコミもあったように記憶している。

 ライフスタイル、交通体系など国民生活に広く関係するビジョンを経済
産業省だけでつくるのは、無理な話だ。エネルギーの長期見通しは政府全
体で取り組むことにしてはどうか。                 
 他人のライフスタイルにはいろいろ言えるが、省エネに関しては特に、「自分はこのように省エネしており、実績も上げてきた」などと言わないと、まったく説得力に欠けるものだ。「他人の振り見て我が振り治せ」とはよくいったものである。

 国のエネルギー政策は、政府全体で取り組むだけではまだ心許ないと、我々は常々感じていた。衆参両院に「エネルギー(常任)委員会」を設け、まずそこでしっかり議論してもらいたい。国会での議論がないままエネルギー政策が一人歩きするものだから、プルサーマル計画などは国是といっても、地元での住民投票でひっくり返される。こういうことは勘弁してもらいたい。

 国の政策を地方住民に説明し、説得するのは、本来なら政治家の仕事ではないだろうか。そのためには国会の場でしっかり議論し、承認されたエネルギー政策を、政官民が一体となって進めなければならないだろう。

 ちなみに日本のエネルギー政策の骨格が記載された「長期エネルギー需給見通し」は、いままでの例でいうと、閣議で了承が得られれば、よほどのことがない限り、国会で議論されることもなく、「国是」あるいは「国のエネルギー政策」として一人歩きしてきたのである。

             「G研」代表