「朝日新聞」(2001年6月29日)

[社説]−−−−−−−−−−−−−「エネルギー需給」

      政府全体で取り組め

<その2>


 今回は、この目標を「10〜13基」に下げるなど修正したが、原発建
設への厳しい空気からみて、電力業界には、それでも実現は難しいとの見
方がある。                            
 当然であろう。世界に名高い大新聞が「反原発」に世論を引っ張っているのであるから、あと10年足らずで建設予定地の周辺住民を説得することは非常に難しいのである。地元の了解さえ取り付けることができたら、例え、環境調査、地盤調査などから始めなければならなくとも、10基、20基を建設することなど難しいことではない。決して強がりを言ってるわけではない。

 マイカーや家電、サービス産業など民生分野でも大きな需要抑制を期待
している。この目標達成はさらに容易ではない。不況下でも需要が急増し
ているからだ。                          
 CO2排出削減目標を省エネルギーで達成することが如何に難しいか、朝日もこのことに関してはよく分かっているようだ。しかし、いかに難しいからといって、省エネも原発同様諦めるわけにはいかない。何故なら「温室効果現象」が地球に与える影響の恐ろしさを我々は百も承知しているからだ。

 エネルギー部門はCO2(二酸化炭素)排出の大部分を占めている。20
10年のこの部門の排出量を90年と同じにするのが政府の目標だ。すで
に90年より9%も増えていることを思えば、いかに困難かがわかるだろ
う。                               
 この記述もその通りである。ここまで分かっていて、朝日は、原発の増設なしにCO2を減らす方法があるというのだろうか?

 京都議定書の約束を守る努力をすべきなのは、いうまでもない。太陽光
発電、風力発電など新エネルギーの供給を今の3倍に増やすため予算、税
制、技術開発などさまざまな面で後押しすることも賛成だ。      
 まあ、これこそ「現実とのかい離」と言わざるを得ないが、「藁をもつかむ思い」の「藁」が新エネで、それが「現実」なら、致し方ない政策であろう。

 それでも、9年間に原発を10基以上も増やさないと実現できない、と
いうような計画を示されると、ややしらけてしまう。         
 「しからばお尋ねしたい」といささか「禅問答」めいてきたが、残された10年間に原発を1基もつくらないでCO2削減目標を下げる方法があれば伺いたい。さて、回答や如何に・・・。

 調査会の審議の過程では「原発は1基も増えない」シナリオも検討した
が、経済や国民生活への打撃が大きすぎるとして、参考資料にとどめたと
いう。                              
 「原発は1基も増えない」というシナリオは、温室効果ガス削減目標への悪影響はおろか、日本経済や国民生活への打撃は、想像するだけで空恐ろしくなる。調査会は、よくも「参考資料」として留めたものだ。

 なぜ「目いっぱいかゼロか」といった極端な打ち出し方をするのか。原
発については「2010年までに数基増える」との現実的なシナリオも必
要だと思う。                           
 再度言っておくが、今後9年の間に原発を「10基から13基」というのは「目いっぱい」の数字では決してない。日本の原子炉メーカーは3社あり、必要とあらば、アメリカなどの原子炉メーカーへの助っ人要請も可能で、向こうも快く応じてくれるだろう。しかし、この程度の建設なら国内企業で十分対応可能である。

 いっておくが、「数基」などといった表現のエネ政策はない。

 「今後9年間でCO2排出量を9%も減らすためには、少なくとも原発10基は新規につくらなければならない。景気が上昇すれば、13基くらいはつくなければならないかも知れない」という意味である。

 環境税を正面から取り上げていないのも疑問だ。「需要抑制の効果が弱
いし、効果が出るまでに時間がかかる」といった理由をあげているが、税
収を環境対策に使うことによって、エネルギー需要仰制、CO2削減にか
なりの効果があるという試算もいくつかある。            
 仮に「新聞税」をかけて購読料を値上げしたら、購読者は半減するだろう。でも新聞を読まなくても国民生活が打撃を被ると言うことはないだろう。しかし、環境税を課して電気代やガソリン代などを値上げしたら、国民生活に多大の打撃を与えることは火を見るより明らかである。

 新聞は、国民生活の中にかなり浸透したとはいえ、テレビやインターネットで世の中の動きは知ることができるから、生活必需品とはなっていない。しかし、電気を始めとするエネルギーは国民生活になくてはならない生活必需品、いや、水や空気と同じくらい重要だから「必需品」以上ではないだろうか。

 だから、税金などの方法で恣意的に値上げしても、需要が落ちるとは思えない。むしろ、それによる国民生活への悪影響の方が心配だ。

         <次につづく>