日本経済新聞(2010年3月13日)
<社 説>
これは低炭素社会への第一歩にはなる
温暖化ガスの排出をどう抑えるか。政府は基本法案を閣議決定し、国会に
提出した。米中など主要国が加わった「意欲的な目標の国際的合意」という
前提で、国内排出量を2020年までに1990年比で25%減らす目標を
明記した。
「温暖化ガスの積極的な抑制が産業の国際競争力を確保し、持続的な成長
を実現する」という理念のもと、化石燃料の消費への課税(環境税)や排出
量取引制度の導入、原子力発電の推進などを盛り込んだ。低炭素社会をめざ
して政策を一応はすべて並べた形だ。
温暖化ガスをほとんど出さない原発は低炭素化の要である。この扱いにつ
いて「脱原発」を掲げる社民党を説得し「推進」と明記した。
日本では原発の稼働率は60%と低迷している。老朽化した原発が増える
なか、安全性を保って稼働率を欧米並みの80%以上にどう高め、いかに新
増設を進めるか。国会審議ではその処方せんを議論してほしい。
大工場などに排出量の上限(排出枠)を設け、余分に減らせた分や不足分
を売り買いする排出量取引では「法律施行後、1年以内に成案を得る」と明
示した。これまでは導入の時期が明らかではなかった。
排出量取引は温暖化ガスに値段をつけ、コストを明確にして企業の省エネ
を促す制度である。法案では、工場などに総排出量の上限を課す総量規制を
基本とし、生産量当たりの排出量を減らす方式も「検討する」とした。
排出を確実に減らすには、総量規制が望ましい。生産量当たりの方式は、
太陽光による発電装置や蓄電池など、これから成長が見込まれるような産業
に限るべきだ。
太陽光など自然エネルギーの割合を20年までに10%に増やす目標や、
自然エネルギーを決まった価格で電力会社が買い取る制度も盛り込んだ。目
標達成に向け、政府は買い取りの対象や価格を詰め、肉付けを急ぐ必要があ
る。
法案づくりは環境、経済産業などの副大臣級チームが主導したため、経済
団体などには「透明性に欠く」と不満もある。政府は国会審議で、政策の効
果と経済的負担についてデータを公表し、国民や企業の理解を得るべきだ。
京都議定書に続く温暖化防止の新たな国際枠組みづくりは難航し、合意の
見通しが立っていない。米中などの本格的な参加が前提となるのはもちろん
だが、国際合意がないからといって、日本は低炭素化への挑戦を足踏みさせ
てはならない。
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