朝日新聞夕刊(2009年12月3日)


<環境エコロジー>


[環境税、くらしどうなる]


  「ガソリン安く、灯油や電気は高く…1世帯の負担 年1127円増」


        政権交代で注目、来年度から導入?


(その2)

 「鳩山内閣は、2020年までに温室効果ガス90年比『25%削減』を国 際公約する一方、自動車関連諸税の暫定税率廃止(年約2.5兆円の減税) を政権公約(マニフェスト)で掲げている。環境税は、その『穴埋め』財源 として注目され始めた」                        

 「暫定」とつく税金は、せいぜい1、2年で廃止するのが常識であろう。それ にこの自動車関連諸税の税収のほとんどは高速道路建設に充てるという目的税で あったから、それ以外の地球温暖化対策に使えないということになる。

 「暫定税率は廃止するが、自動車諸税の税率は残す」と鳩山政権は来年度予算 の中で閣議決定したという。これもまた「政治的配慮」というのであろうが、税 制とは国民の誰しもが理解できる簡単明瞭でなければならない。しかしこの税制 の変更はあまりにも難解不可解といわざるを得ない。

 地球温暖化対策のため、ガソリン車を減らし、電気自動車かせめてハイブリッ ド車を大々的に普及させなければならないのだから、従来の自動車租税とするの ではなく、やはりガソリンの消費を減らさなければならないのだから、ガソリン 税の「暫定税率」のみを残し、自動車租税の税率はガソリン車と電気自動車に格 差を付けてはどうかと思っている。そしてこれらから上がる税収は、そのすべて を温暖化対策に使い、高速道路のメンテナンス費用などは高速道路の通行料で、 新たな道路建設を棚上げすれば、十分賄えるはずだ。

 「ガソリンの暫定税率部分を環境税と単純に『衣替え』しなかったのは、C O2排出量当たりの税金が高いガソリンと、安い石炭などとの差を縮めるた め。現状で石炭はCO2排出1トン当たりの税額がガソリンの80分の1し かない。日本では90年代以降、価格が安いが、CO2排出が多い石炭の使 用が急増している。環境省は新税導入で『脱石炭』への足がかりを狙ってい る」                                 

 石炭は「燃やして使う」方法以外の使い道はほとんどないが、石油は「燃やし て使う」以外にも色々な化学製品などの原料としても貴重な資源であって、以前 から石油は「燃やして使う」だけでは「もったいない」といわれてきた。したが って石炭と石油にかかる環境税に差が付けられるのは当然だろう。

 ついでに言及しておきたいのは、発電すれば同じ電気でも、石炭火力、石油火 力、天然ガス火力には、CO2排出量に大きな違いがあるから環境税に差を付け るのは当然だ。それにCO2を排出しない水力や原子力、それに風力、太陽光発 電などに対する環境税は限りなくゼロに近づけるのは当然の成り行きと考える。

 もっといえば、消費者が払う電気料金は、電力会社から示される発電メニュー にもとづいて消費者が自由に注文できればどうだろう。「原子力で発電した電気 を100%下さい」とか「水力50%と風力50%のミックスで」というふうに である。当然ながらメニューにはそれぞれ発電コストに応じて値段が提示されて いる。電力会社も客の注文に応じて今後の電源開発を進めることができるという ものだろう。

 「燃料ごとの課税額=表=は、暫定税率が廃止されるガソリンは1リットル 当たり50.84円と5円安くなる。一方、灯油は現状の2.4倍の1リッ トル当たり4.82円、電気は2倍の1キロワット時当たり1.04円、石 炭は5倍近い1キロ当たり3.44円と高くなる。環境省は1世帯当たり年 平均1127円の負担増と試算する」                  

 「1世帯当たり年平均1127円の負担増」と環境省は試算したそうだが、ど うも胡散臭い。1年間に千円とちょっとの負担で地球温暖化が止められるならと 早とちりしかちだが、どうもその程度の負担ではなさそうである。

 平均的な家庭の負担増の数値を示すより、ガソリンは1リットル5円安、灯油 は現状の2.4倍、電気は2倍、石炭は5倍近く値上がりする、という数値に注 目したいのである。電気代一つとっても、現状の2倍になれば、環境税の導入で 1家庭の負担額が千円ちょっとくらいではすまないだろう。

 マスコミはこのような行政府の提示する数字のからくりこそ暴露してもらいた いものである。


(次ページに続く)