朝日新聞(2009年10月7日)


<3面記事>


    国内CO2「10%減必要」


              IEA試算==25%減には年2兆円


(その3)



 国際エネルギー機関(IEA)は6日、地球温暖化防止に向け、2020 
年に必要な各国の二酸化炭素(CO2)削減量の試算を発表した。日本は、 
国内分だけで「90年比10%削減」が必要とはじき出した。鳩山由紀夫首 
相は「25%削減」を国際公約したが、IEAの試算は、25%のどれだけ 
を国内分で、どれだけを途上国支援でまかなうかという議論に影響を与えそ 
うだ。                     (バンコク=山口智久)





 IEAの試算は、深刻な温暖化被害を招くとされる気温上昇を「産業革命 
以前から2度以内」に抑えるという長期目標を前提に置いた。この目標は今 
年7月、日本を含む主要国(G8)に中国やインドなど新興国を加えた主要 
経済国フォーラム(MEF)でも合意。13年以降の温暖化対策の国際枠組 
み(ポスト京都議定書)を決める国連交渉でも、相場になりつつある。   
                                   
 試算は「2度以内」を達成するための省エネ技術などの導入費用が、各国 
で均等になるよう条件を設定。各国が発表していた温暖化対策も加味して計 
算した。                               
                                   
 日本の場合、麻生前政権が6月に発表した中期目標「90年比8%減」を 
参考に、新車のうち次世代自動車が5割を占めるようにするなど、目標達成 
のために示された国内対策に基づいて算出した。その結果、国内分だけで  
「90年比10%減」となり、鳩山政権が掲げる「25%減」よりも緩い数 
値となった。                             
                                   
 他国と比べると、欧州連合(EU)は「23%減」で、EUが発表してい 
る「20〜30%減」の範囲内。米国の場合は「3%減」で、「90年水準 
に戻す」という目標よりやや厳しい。IEAの田中伸男事務局長は朝日新聞 
に対し、「鳩山政権の目標は、先進国のなかでもはるかに野心的だ」と評価 
した。                                
                                   
 IEAの試算によると、日本の10%削減に必要な国内対策の追加的な費 
用は年々増え続け、20年時点で170億ドル(約1兆5千億円)。一方で 
省エネ効果で石油と天然ガスの輸入が減り、対策を打たない場合に比べて3 
00億ドル(約2兆7千億円)の費用が減るという利点も指摘した。    
                                   
 鳩山政権の目標は、IEAの試算より15%多い。ポスト京都では、途上 
国などに省エネ技術を提供して減らした分を、日本で削減した「排出枠」と 
見なし、日本の目標達成に算入できる仕組みの利用が検討されている。この 
方法で15%分をすべてまかなった場合、田中氏によれば20年時点で排出 
枠の取得費用が年4400億円かかる。                 
                                   
 「25%」達成のために、合わせて年約2兆円かかる計算になる。国内で 
は産業界などから排出枠取得は「国富の流出」という批判がある。鳩山政権 
は国内削減分をできるだけ増やし、途上国などから取得する排出枠分を少な 
くしようと検討中だ。                         
                                   
 12月の国連の締約国会議(COP15)に向けバンコクで開催中の作業 
部会では、途上国が日本に対し25%削減の内訳を示すよう要求。負担増を 
懸念する国内の産業界などからも内訳を問う声が高まるのは必至だ。鳩山政 
権はIEAの試算を分析し、日本が削減にかける費用と目標達成への道筋を 
国民に示すよう迫られる。