「電気事業連合会の森詳介会長は12日会見し、使用済み核燃料を再利用す
るプルサーマル計画の見直しを正式表明した。実施する原発の数(16〜1
8基)は維持するが、実施が出そろう時期2010年度から15年度に5年
間延期する。資源小国・日本が目指す核燃料サイクルの難しさが改めて浮き
彫りになった形で、エネルギー調達や原子力ビジネスにも微妙に影響しそう
だ」
「エネルギー調達や原子力ビジネスにも微妙に影響しそう」というのはいささ か大袈裟ではないだろうか。延期しなければならなくなった理由は次のように述 べている。
「原発関連の不祥事の影響で全体の進ちょくが大幅に遅れていた。九州電力 など3社は10年度までにプルサーマル発電を実施する見通しだが、地元か ら了解を得た原発は8基にとどまる。森会長は『(データ改ざんや細管破断 事故などの)原発トラブルで地元の信頼を損なったことが大きい』と見直し の理由を述べた。今後も地元対策が計画の成否を左右する見通しで、不祥事 で進ちょくが遅れている東京電力などには重い課題となる」
つまり原発に関連した不祥事が起こり、関係した電力会社は地元自治体からの 信頼関係が薄れ、プルサーマル計画も理解してもらえなくなったのが延期せざる を得なくなった最大の理由としている。
はたしてそうであろうか。不祥事がなければ、プルトニウム・ウラン混合酸化 物(MOX)を軽水炉の燃料として使えるようにする試験計画「プルサーマル計 画」の必要性や安全性に関して、原発立地の地元行政は理解してくれたであろう か?
そもそもプルサーマル計画は、民間の電力業界の自主的な試験計画ではなく、 国を挙げてのエネルギー計画の一環として電力業界が協力するということになっ たのではなかったのか。そうであるなら、地元への交渉を電力に任せておかない で、国の行政が何故率先して動こうとしないのか。
「日本は07年以降、活発な資源外交でカザフスタンなどからウランの長期 安定調達を進めてきた。しかし、核燃料サイクルの完成が遅れるとウラン資 源の有効利用が進まないうえ、燃料加工など海外に依存することになりエネ ルギー安定調達に影を落とす」
このような懸念が考えられるなら、よけいに国の行政府は地方自治体に出向い て協力を要請するか、あるいは国が許可している計画に地方自治体の二重の許可 が必要とするシステムを解消すべきではないだろうか。
「二階俊博経産相は「プルサーマルを含めた核燃料サイクルの確立は原子力 発電の優位性をさらに高めることができる。核燃料サイクルを推進する基本 方針に変わりはない」との談話を発表した」
この程度の談話では何の解決策も導かないであろう。
地方分権が叫ばれる今日、グローバルでロングレンジなエネルギー政策こそは 中央政府の専権分野であろう。
「エネルギーの国内自給率が4%と資源に乏しい日本は、ウラン燃料の有効 活用を図る核燃料サイクル政策の推進を掲げてきた。先行するフランスなど の技術を導入しながら、まず使用済み核燃料を再処理して原発で再び使う 「プルサーマル計画」を進める考えだが、計画の延期を迫られ、技術面での さらなる遅れが懸念される」
プルサーマル計画の完全実施が多少遅れることによって「技術面でのさらなる 遅れ」などまったく懸念はしていない。プルサーマル計画による主なチェック項 目に安全性は含まれていない。軽水炉から取りだした使用済み燃料を再処理して プルトニウムを回収し、MOX燃料に加工して再度軽水炉に装荷するプロセスを 確認することが主要なテスト項目なのである。
「プルサーマルは63年にべルギーで始まり米国や仏、ドイツなど世界の5 0基以上の原発で実績があるが、燃料の加工などは技術的に難しく、年内に ようやく動き始める日本がフランスなどに追いつけるかどうかは疑問だ。急 速なエネルギー需要拡大が続く中国やインドは高速増殖炉の研究開発に力を 入れるなど日本の地位を脅かしている」
軽水炉で生まれたプルトニウムを再度軽水炉に入れて燃料にすることに安全性 に問題があろうはずがない。それにプルサーマル計画は、ベルギー、アメリカ、 フランス、ドイツなどで十分テスト済みなのである。
プルトニウムは本来、高速増殖炉の燃料として使ってこそ本領を発揮するので あって、プルサーマルは高速増殖炉が実用化されるまでの繋ぎであるから、やは り高速増殖炉の実用化を急がねばならないであろう。
「G研」代表