朝日新聞(2009年4月1日)


<エコウォーズ=新エネの壁>@


        風力つかめぬ日本


(その5)


   <2面本文転載>


   空回り 風力発電

                                                            

       電力需要は横ばい 導入に慎重

                                                    青森県六ヶ所村の日本風力開発(本社・東京)二又(ふたまた)発電所に  は、大型風車34基とともに、巨大な蓄電池を備えた倉庫のような建物群が  ある。風次第で出力が安定しない風力発電の弱点を補い、いったん電池に電  気をためて一定の強さの電気を送り出せる。世界初の「次世代型」風力発電  所として昨年4月に完成した。                                                           だが、運転を管理する六ヶ所村事業所の山本賢二所長は「他国のように発  電した分すべての電気を送ることができたら、本当は電池なんていらないの  ですが」とこぼす。                                                                風車だけなら120億円で建設できたが、蓄電池をつけたことで建設費は  220億円に膨らんだ。国が3分の1を補助するとはいえ、割高だ。                                          しかも蓄電池をつけて安定的に送電できるようになったのに、送電線には  最大出力の半分、4万キロワットしか送れない。送電線を管理運営する東北  電力は「電気の品質を維持するには、ある程度制限する必要がある」と説明  する。                                                                      電気は、発電量と需要量を釣り合わせることで電圧と周波数を一定に保つ。 風の強弱で変動する電気が送電線網に大量に入ると、そのバランスが崩れる  というわけだ。                                                                  ただ、送電線網が9つに小さく分かれ、変動を吸収しにくくしている現実  もある。                                                                     東北電力は昨年、蓄電池をつける条件で7万キロワット分を募集した。く  じ引きで2杜が当選したものの、ともに後に辞退した。いずれも「詳細に検  討した結果、建設費用が倍かかり、採算に合わない」との結論に達したとい  う。                                                                       電力会社でつくる電気事業連合会は昨年5月、500万キロワットまでは  電気の質を落とさずに導入できると発表した。ただ、08年度中の建設が決  まっていた分を除けば、あと60万キロワットしか入らない勘定だ。そもそ  も、もう適地はなく、送電線網の見直しなど不要との立場をとる。                                           電事連の藤井裕三・電力技術部長は「私たちには停電を起こさないよう電  気の質を守る責務がある。新エネの導入に反対していない。石橋をたたくよ  うにして慎重に導入を進めているだけだ」という。                                                  風車をめぐっては、景観の問題、鳥が羽根にあたるバードストライク、風  車の回転による低周波音が与えるとされる人体への影響などが取りざたされ  ている。洋上に建てたとしても漁業補償の問題が起きかねないと言われる。  資源エネルギー庁の吉野恭司・電力基盤整備課長は「風力発電の導入はすで  に限界近くまで来ている」と話す。                                                         しかし、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は05年、   「30年に2千万キロワットが可能」との報告書を出した。さらに日本風力  発電協会は「陸上の適地の半分、洋上の1割に風車を建てたとすると810  0万キロワット分、発電できる」と試算する。協会の斉藤哲夫・企画室長は  「今ある連系線を使うだけでも1千万キロワットは導入できる」と訴える。                                       協会は、電力会社の買い取り価格が低すぎることや、高層ビル並みの厳し  い建築主の適用などが導入を妨げていると指摘する。                                                 風力発電が増えない理由は次々と並べ立てられるが、それを変えようとす  る動きは弱い。背景には、電力需要が横ばいで、新しい発電設備を必要とし  ていないという事情はあるものの、政治的な決断で取り除ける障害も多い。 


(次ページに続く)