<社 説> 朝日新聞(2001年4月1日)

     

「地球温暖化==米国の離脱は許せない」

[その2]

 朝日自身、この社説を掲載した前日(3月31日)の夕刊に小さく扱っているニュースのことこそ、ブッシュ政権が「京都議定書」を指示しない旨の意志表示に対する論説に取り上げなければならない。

 それは、朝日の記事のタイトルを引用すると、「原発計画が米で具体化、規制委が審査態勢」のことである。本文は、12字×23行とほんの小さく、共同の配信を記事にしただけである。

 同じニュースを、さすが日本経済新聞は、3月29日の朝刊で、4段見出し、本文5段で、自社の特派員の署名付きで扱っている。

 これらの記事が報じるニュースとは、アメリカ連邦政府が発表する国家エネルギー政策に、原子力発電の利用推進を盛り込んでいるということなのだ。既に104基の原発が運転認可を得て商業運転を続けていることからすれば、いまさらそのアメリカの国家エネルギー政策に原発が盛り込まれたことにさして驚くことはない。

 驚くこともないが、アメリカでは1979年に起こったスリー・マイル・アイランド原発の事故以来、建設計画が止まっていたことからすれば、今回の復活政策は世界が注目すべきニュースの一つであろう。

ただ、逆風の原子力界にあって、アメリカが原発推進を復活させたということは、朗報であるに違いない。しかし、反原発の報道を展開している朝日とすれば、このアメリカのニュースさえあまり大袈裟に取り上げたくなかったのであろう。

 ただ、我々がもっと注目すべきことは、何故、アメリカ連邦政府が、国家エネルギー政策の中に原子力発電の利用推進を復活させたのか、である。

 アメリカの原子力は、電力需要の22%を担っているが、近年、40年間の認可期限の切れる原発も出ていて、それらは順次20年間の期限延長を認めている。この事実からしても、原子力を完全に止める方向にあったのではなく、事あればいつでも復活させる用意はできていたと言えよう。

 原子力を復活させた理由は2つ考えられる。電力事業の自由化傾向で、原発抜きではカリフォルニア州のように電力供給不足に陥る危険性が出てきたこと、それに、地球温暖化防止に大々的に貢献させる方策は原発ということに気付いたことである。

 つまり、地球温暖化を防止するには、CO2を出さない原子力発電所の建設を積極的に進めるのが最良の方法だが、そのことに関しては、ほとんど毎年開かれている気候変動枠組み条約に関する国際会議(COP)の議題に取り上げようともしない。原子力をいくら推進しても、温室効果ガス削減目標値には加算されない。

 これには賛同しかねるから、アメリカは独自で、「原発の役割を再評価し、従来の慎重姿勢から前向きに利用増を検討する路線に転換する」(3月29日付け日本経済新聞)という、アメリカ政府の重大な政策変更を無視する朝日の社説に、我々は異議を唱えるのである。

 アメリカと日本のGDP(国内総生産)の合計は世界の40%を占めるといわれている。その両国が、経済活動を維持するために消費するエネルギーの量もずば抜けて多いことは確かだ。よって温室効果ガスの放出量も多いのである。そこで、京都議定書は日本に6%、アメリカに7%の温室効果ガス削減を求めているのである。

 いままでの経済活動を評価することなく、温室効果ガスを多く放出している国はそれだけ多く削減目標を約束しなければならない、というのが欧州諸国や開発途上国等の主張である。しかも、その削減には、主に省エネと自然エネルギーのみで達成し、原子力発電は新規に建設してもCO2を削減したことにはしない、というのでは、いくらなんでもアメリカは納得できまい。

 同じく納得できない日本は、従来からのソフトムードの外交折衝をモットーとしているためか、「みんなが決めることなら努力しましょう」と、京都会議の議長国でもあって、「京都議定書」をしぶしぶ約束させられた経緯がある。

 電力コスト低減のため電力事業自由化は進めなければならないが、発電コストは安いが長期先行投資を余儀なくされる原子力発電所の建設は誰がどう進めるのか?

 地球温暖化を防止するため、各国が協力して温室効果ガス削減目標を各国の事情に合わせて決めて努力しなければならないが、その削減効果が高い原子力発電所の新規建設は勘定に入れてはならないという制約を突きつけられては、世界経済の発展に貢献してきた先進工業国として、国際社会に向かって異議を唱えざるを得なくなるのは当然と考える。

 原子力発電を国家エネルギー政策の中でどのような役割を演じさせるかを十分に議論しないまま、電力事業の自由化を進めることは、電力危機に導く墓穴を自ら掘ることになりかねない。

 「京都議定書」に盛り込まれた温室効果ガス削減目標を達成させるための有力な方策として原子力発電所の新規建設を認めないでは、日米のような先進工業国からの協力気運は薄らいでくるだろう。

 地球温暖化、電力の自由化、そして原発推進は、三位一体で考えなければ、いずれの実現も可能にはならないだろう。

       「G研」代表