朝日新聞(2009年3月19日)


<社説>================「志賀原発判決」


      耐震のお墨付きではない


(その2)


   <本文転載>


 運転中の原子力発電所に初めて差し止めを命じた一審判決から3年。原発 
の耐震力が争点となった裁判の控訴審で、住民敗訴の逆転判決が出た。北陸 
電力・志賀(しか)原発2号機の運転差し止めをめぐる民事訴訟である。  
                                   
 名古屋高裁金沢支部は、原子炉の安全は保たれているとして「住民らの生 
命、身体、健康を侵害する具体的危険性は認められない」と言い切った。  
                                   
 06年3月の金沢地裁判決は正反対だった。想定を超えた地震動が原発事 
故を起こす恐れがあることに触れ、「周辺住民が許容限度を超える放射線を 
浴びる具体的危険がある」と、住民らの訴えを認めていたのである。    
                                   
 いま運転中の原発はすべて、78年にできた政府の耐震設計の指針をもと 
に揺れを想定し、それに耐えうる設計になっている。この指針の妥当性に一 
審判決は疑問を投げかけたわけだ。                   
                                   
 その半年後、指針が28年ぶりに改定された。この訴訟とは関係なく、政 
府が見直しを進めていたものだ。新指針は、より強い地震にも耐えられるよ 
う求めている。                            
                                   
 一審敗訴の後、北陸電力は周辺の活断層を調べ直し、2号機だけで120 
0カ所を超す耐震補強をした。そのうえで新指針にもとづいて点検し、「安 
全性を確認した」と主張した。                     
                                   
 これを全面的に受け入れた今回の判決は、新指針の妥当性を司法として初 
めて認めたものともいえる。                      
                                   
 しかし、この判決を「日本の原発は地震がきても大丈夫だ」というお墨付 
きととらえ、安心してはならない。                   
                                   
 ここ数年、旧指針の想定を超える地震が相次いでいる。05年には宮城県 
沖地震が東北電力・女川原発を、07年には能登半島地震が志賀原発を、新 
潟県中越沖地震が東京電力・柏崎刈羽原発を、それぞれ襲った。      
                                   
 また、新指針の下、電力各社などが進めた調査では、原発周辺の活断層の 
数や規模の見直しが目立ち、すべての原発で想定される揺れが引き上げられ 
た。それでも電力各社は、設計時に耐震性の余裕をもたせているとして「安 
全上の問題はない」と報告している。                  
                                   
 本当にその通りなのか、経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員 
会が二重の検証をしている。志賀2号機についてはすでに両方から「合格」 
の結論を得ているが、全国の原発では検証作業がまだ続いている。     
                                   
 こうした検証は、1回で終わらせてはならない。地震をめぐる科学は日々 
進歩し、その知見は更新される。現時点で安全とされた判断が将来も通用す 
るとは限らない。保安院は今、原発の耐震度を定期的に見直すシステムづく 
りを進めている。常に最新科学にもとづく安全性を確保したい。      
                                   
 今回の判決に気を緩めず、耐震チェックを繰り返すことが大切だ。