<社 説> 朝日新聞(2001年4月1日)

     

「地球温暖化==米国の離脱は許せない」

[その1]

> 温室効果ガスの削減目標を決めた京都議定書を、米国政府が、支持しない
>方針を明らかにした。
 
> 京都議定書は97年に採択されたが、まだ運用ルールが決まっていない。
>今夏の会議で完成させようと各国が努力している。そこへ米国の事実上の離
>脱宣言だ。
 
> 議定書の発効が危うくなったのは間違いない。世界的なうねりとなってい
>る省エネ技術開発への逆風ともなろう。
 
> 反対の理由としてブッシュ政権は、温室効果ガスの急激な削減は米経済の
>利益を損なう、途上国に削減義務がないので不公平だ、などをあげている。
>いずれも京都会議のころからの主張である。
 
> 実際の交渉では途上国の規制参加も議論されるなど、米国の要求に沿う動
>きが出てきた。各国の努力を無視して約束事をひっくり返す姿勢には驚かざ
>るを得ない。
 
> 当然のことながら、欧州諸国は一斉に反発している。川口順子環境大臣も
>批判的な談話を発表した。政府は欧州などと協力して、米国を交渉に引き戻
>すために強力な説得活動をしてもらいたい。
 
> 温室効果ガスの最大の排出国である米国が、京都議定書という国際協調の
>バスから降りることは許されないのである。
 
> 米国を説得するためには、日本も国内の態勢を固めなければならない。
 
> 国際競争に勝つため、省エネ技術の開発に乗り出した業界は京都議定書に
>前向きだが、経済に悪影響を与えると否定的にとらえる業界もある。一部に
>は「事態を静観して米国が京都議定書を白紙に戻すのを待てばよい」という
>雰囲気さえある。
 
> こうした状況のままでは、米国に対して強い姿勢はとれまい。
 
> ブッシュ政権の態度がこのまま変わらなかった場合、「米国抜き」でも議
>定書の発効を目指し、国内の排出削減政策を進めるのか。それとも、「米国
>が批准しない議定書には参加できない」とあきらめるのか。日本の決意も問
>われることになる。
 
> 気候変動枠組み条約の策定交渉は、91年に開始された。百数十カ国が膨
>大な数の会議を重ね、温暖化防止という共通の目的のために、南北が繁栄と
>負担を分け合う枠組みづくりに取り組んできた。
 
> 何とかたどりついたのが京都議定書である。不完全ではあっても、一国の
>わがままで台無しにされてはたまらない。
 
> 米国内も一枚岩ではないだろう。ホイットマン米環境保護局長官は「温暖
>化への対応は、国際社会における米国の信用の問題になる」と、後ろ向きの
>方針に反対したことが伝えられている。これまで、温暖化の研究を進め、危
>機を訴えてきたのも、米国の研究者が中心だった。
 
> 温暖化交渉の10年で、地球環境問題への関心も確実に高まった。各国の
>世論が、それぞれの国の政府の背中を押し、米国の姿勢を変えさせることを
>期待したい。
 これで「地球温暖化==米国の離脱は許せない」と題する社説は全文である。この文章の中にはさしあたっての「異議あり」の部分はない。「異議あり」は、朝日がこの社説の中にアメリカのもう一つの動きを取り上げなかったことに対してである。

    (次につづく)