<その3>
 
朝日新聞夕刊、2001年2月24日
 
 
>◆分散型発電の可能性
 
> 電力供給で、最近注目される技術の一つが、マイクロガスタービン、燃料
>電池など電力需要地に設置して発電を行うとともに、発電に伴って生じた熱
>の利用も図る高効率な分散型の発電設備である。さらに、電力のピーク時の
>消費量を削減できれば、余った発電能力を削減できる。ディーゼルエンジン
>によるそうした「オンサイト電源」の設置で、業績を伸ばし、この分野で一
>番の占有率を確保している会社が大阪に本社があるベンチャー企業のエネサ
>ーブ社だ。
 電力事業は自由化され、誰でも参画できるようになったのだから、いい技術を使った発電システムを開発することは大いに歓迎されるだろう。ただ、余った電力を従来の電力会社が積極的に購入することを要求しては、何のための「自由化」か分からない。従来からの電力会社も新規参入の電力業者も、互いにライバルであり、公平な競争で、消費者へのメリットを拡大してもらわないと、誰のための「自由化」か分からなくなる。

> 同社は、スーパーマーケットなどの電力需要家に、十年の間、燃料代も、
>整備費用も一定という条件を提示している。
 消費者に好ましいサービスを提供することは望ましい。ただそのサービスが安定して継続されることは当然期待されている。入札を破格の安い値段で落とし、あとは独占して我が物顔で振る舞うという業者であってはならない。特に、「燃料代が10年間一定」というのは胡散臭さを感じる。燃料、ここでは石油だろうが、原油価格は日々刻々と変動していることは、世界が承知しているところだからである。

> 日本では、電力価格は燃料費調整制度に見られるように、価格の変動を、
>そのまま顧客に転嫁するケースが多い。そのなかで、顧客の二−ズをくみ上
>げて、それにこたえる商品として発電設備を販売・管理するのが、エネサー
>ブ社で、この会社は多くの電力需要家の支持を受けている。
 燃料を注入すれば、短くとも1年間は安定して発電を継続できる原子力発電ならいざ知らず、原油価格や為替相場が日夜大きく変動する火力発電の燃料費を、長期にわたって電力価格に吸収させるためには、大きな利益幅を予めもたせておく必要がある。さもなければ、そういった過当競争が、経営危機におとしめ、引いては電力危機をも引き起こしかねないのだ。電力価格の燃料費調整制度は、3カ月毎に燃料の輸入費用に連動して、電力価格にきめ細かく反映させようという制度だから、消費者にとっては有り難い制度なのである。

> 分散型電源の導入は、エネルギー効率の向上とともに、地域の防災性の確
>保という効果も持つ。例えば、山口県の下松市にある下松タウンセンターの
>ように、防災用の拠点として設計された施設がある。市民ホール、飲食店街
>などと自家発電を組み合わせた複合施設で、災害発生時には、市民の避難所
>としても住民を収容できる優れた防災機能を備えた施設だ。こうした防災性
>を備えた分散型の発電機を持つ施設が各地に増えていくことが、エネルギー
>の安定供給に最も有効な手立てとなる。
 分散型発電機を設置し、独自で燃料を確保し、独自でメンテナンスをし、独自で環境への配慮もすること、これらも「自由化」の下では当然なのだ。ただ、これが「エネルギーの安定供給に最も有効な手立て」であるとは、どうしても思えないのだが、国がエネルギーの自立を目指しているように、自治体も、大規模消費企業も、大いに自立を目指していただきたいものである。

 この際、ひとたび、自立を目指したなら、将来、石油危機のような事態になろうとも、そう簡単に何処かからの援助は期待できないということも肝に銘じておくことが肝要である。

> 日本で安定したエネルギーの確保としての小規模電源を普及させれば、エ
>ネルギー利用効率の向上が図れる。かつ、防災性を備えた施設を国内の各地
>に設置できれば、エネルギー供給の信頼性向上に役立つ。積極的に電力自由
>化を推し進め、ネットワーク型の送電・配電網を形成するとともに、高効率
>で防災性を備えた発電施設を各地に設ければ、災害時に大いに役立つ。その
>ためにも、電力自由化の推進は重要である。
 小規模電源の方が、大規模電源よりエネルギー利用効率が高いという主張は、何の根拠もない。むしろ逆だろう。「防災性を備えた施設」とはどのようなものか、まったく理解できない。また、それが普及すれば、「エネルギー供給の信頼性向上に役立つ」という主張も理解できない。

 ただ、ここでいえることは、電力事業を「自由化」で推し進めようとするなら、どういった発電システムが普及するか、それも規制することは望ましいことではない、ということになる。つまり、例えば、小規模か大規模か、地球温暖化に直結した火力発電か廃棄物の原子力発電か、コストの高い風力発電かコストの安い原子力発電か・・・、これらもすべて電力業者が個々の責任において決定できるということである。

 しかし、「積極的に電力自由化を推し進め」れば、「ネットワーク型の送電・配電網を形成する」事業者は、おそらく皆無に等しいだろう。送電・配電部門のコストをべらぼうに高くしていいのなら、話は別である。

     「G研」代表