「朝日新聞」<社説>==その2

  カ州の停電===反自由化の口実にするな


> つまずきは、自由化前夜に端を発する。一九九○年代の好景気で電力需要
>が伸びる一方、電力会社は自田化による価格の低下を見越して発電所建設を
>手控えた。需給がひっ迫した状態で自由化を実施したわけだ。
 電力会社が、公益事業者として事業を展開しているときは、「供給義務」を課せられているから、需要の伸びを詳細に検討し、施設計画を立てるのである。少なくとも10年、20年先を正確に読まなければならない。

 ところが、自由化で取り巻かれていた規制が撤廃されると、ある程度需要が伸びると予想していても、先行投資して発電所を新規に建設するという経営決断が鈍るのは当たり前だ。だから、自由化になったら投資の先行期間が長い原発などをを建設しようという奇特な経営者はいなくなる。こういう思惑を抱いて、原子力反対派はこの電力自由化に諸手を挙げて賛成したのではないのか。

> そこに環境規制が重なった。窒素酸化物の排出枠を使い切って操業停止に
>追い込まれる発電所が相次いだのである。
 これも当然のなりゆきで、自由化後に急きょ出てきた規制でも、自由化と連動して出てきた規制でもない。自由化で電力事業に新規に参加しようとする企業や投資家は、当然考えておかなければならない問題である。「予想できなかった、不測の事態」では決してないのだ。

> 料金の急騰から消費者を守る仕組みも裏目に出た。需要増と供給の伸び悩
>みから卸売価格が急騰したのに、小売価格には上限を設けられ、電力会社は
>経営危機に陥った。
 卸売価格は青天井で、小売価格には上限が設けられているという不可解な商品を扱う小売業者が経営危機に陥るのは時間の問題だった。消費者に気兼ねしながら新規参入の製造業者と卸売業者を手厚く、しかし従来から商いをしている小売業者を冷遇しての自由化である。

> 売買の窓口が一つの取引所だけだと取引が柔軟性に欠ける。自由化の先頭
>を切った英国は、発電設備に余裕があることなどから単独市場でも大きなト
>ラブルはなかったが、来年からは取引所を複数にするという。

> カリフォルニアの場合、事態をより深刻にしたのは、供給や価格を安定さ
>せる効果をもつ相対取引や長期契約を、「高値安定につながる」との理由か
>ら原則禁止にしたことだ。米国でも、ペンシルベニアなど三州が共同運営す
>る電力市場は順調に機能している。ここでは、相対取引や長期契約分が取引
>の八割以上を占めている。
 事ここに至っても、カリフォルニアの電力危機は、一般的な電力自由化が原因ではなく、カリフォルニア特有の自由化策が原因としたいのだろうが、規制を撤廃して自由化するということは、その運用の仕方により影響の大小はあろうが、本来、自由化とは、今までのようにスイッチをひねればいつでも電気が空気のように使えるという安易な暮らしは望めなくなるのだ。自由が大きければ大きいほど、リスクも大きくなる、これは世の摂理である。

> 日本では、二年後に自由化の進展状況を検証し、小口需要家にまで対象を
>広げるかなど方向を決めることになっている。
 「それ見たことか」とは言わないが、今回のカリフォルニアの電力危機を、本当に「対岸の火事」とせず、国内での2年後の検証を待つことなく、いますぐにでもカリフォルニアで詳細に検証するべきであると考える。

> 電力業界には、カリフォルニアの失敗を自由化拡大反対の口実にする動き
>がある。しかし、まだ緒についたばかりの自由化を阻止しようとするのはお
>かしい。日本の電気料金は欧米より割高だ。自由化は料金を引き下げるため
>にも、避けて通れない道である。
 自由化後3年で取り返しがつかないほどの電力危機が来た、と上で書いているではないか。長期展望で考えなければならないエネルギー問題や環境問題を考える上で、3年は、この業界では「緒についたばかり」というのだが、見直すのは早ければ早いほどいいではないか。

 「日本の電気料金は欧米より割高」というのが通説のようにいわれているが、変動の激しい為替レートに変換して比較すれば少しは割高かも知れないが、物価指数や国民の平均年収などを基本にして比較すると、日本の電気料金は必ずしも割高とは言えない。むしろ、資源の少ないことを考慮に入れると、日本の電気料金はむしろ安いといえなくもない。

 「自由化は料金を引き下げるためにも、避けて通れない道」とは、何処をつつけば出てくる言葉なのか、大いに疑問とするところだ。自由化を世界に先駆け、しゃにむに進めたカリフォルニアの自由化の結果が、「電気料金の高騰」と「電力危機」ではなかったのか。料金を引き下げる方法はいくらでもある。電源構成を時代に合わせてベストミックスで決めるのが最良である。

> 日本では、一般企業が電力会社に電気を売る卸売りや、大口需要家向けの
>電力小売りなど自由化は極一部に限られており、電力十社の地域独占体制は
>揺らいでいない。欧米のような卸売り取引所の設置や、発電・送電・配電の
>分離はまだ将来の課題だ。
 「だから何なのさ」と反論したくなるような論理だ。従来の電力会社が、戦後、この体制が出来上がって以来、半世紀、力を蓄えているから、「緒についたばかり」くらいでは自由化の影響はまだ出ていない。しかし、厳しい「自由化競争」が激化すれば、いつまでこの力を持続することができるか、分からない。今回のカリフォルニアの電力危機を目の当たりにして、「電力自由化」の「自由」という響きが爽やかな言葉の裏に潜む落とし穴の恐さを思い知らされたような心境である。

> 海外の例を論じる場合、双方の実情の相違や自由化の進展度合いを念頭に
>おかなければなるまい。それらを踏まえて、先行ランナーの成功や失敗から
>じっくり学びたい。
 この社説自体、カリフォルニアの電力危機という「海外の例を論じ」ているのだから、日本国内の自由化是非論争等に言及する前に、日米「双方の相違や自由化の進展度合いを念頭」において、カリフォルニアの「失敗例」をじっくり学んでいただきたいのである。

    「G研」代表