朝日新聞(2008年6月13日)


<列島けいざい08>


   核燃マネー・期待と不安


      高レベル最終処分場==貧しい自治体誘致の動き


(その3)


   <本文転載>



 立地場所の選定を迫られる高レベル放射性廃棄物の最終処分場。核燃料サ 
イクル関連施設が集中する青森・下北半島では、「県内に造らない」と知事 
が公約する足元で、誘致に前向きともとれる動きがある。巨額の核燃マネー 
への期待からだ。青森以外でも、貧しい自治体の間で「迷惑施設」の受け入 
れが浮上しては消える。(佐藤章)                   




                                   
 原子力発電で使った核燃料を下北半島の青森県六ヶ所村の再処理工場に運 
び、まだ使えるプルトニウムとウランを回収する。これを加工して原発で再 
び燃やす仕組みが核燃サイクルだ。                   
                                   
 だが、再処理過程で出る放射能の高い廃液(高レベル放射性廃棄物)を地 
中深く埋める最終処分場は、立地の候補地すら決まっていない。最終処分場 
はほぼ20年後に着工の予定。調査年数などから逆算すれば候補地はすでに 
選ばれていなければならない。                     
                                   
 候補地になれば、発電施設の受け入れ地域に落ちる電源三法交付金の対象 
になる。文献調査だけで年10億円、その後の概要調査で年20億円が出る。
大盤振る舞いは、安全性への懸念を払拭できない迷惑施設であることの裏返 
しだ。                                
                                   
 60年間の建設・操業期間で、県全体の経済波及効果は約1兆6500億 
円−−。処分場建設にあたる原子力発電環境整備機構(NUMO)は、立地 
の利点をPRする。                          
                                   
 六ヶ所村の北隣、東通村。太平洋岸に東京電力と東北電力の敷地が続く。 
現在、東北電の原発1号機しか立地していないが、用地は900万u、原発 
20基分ある。                            
                                   
 村財政は三法交付金で潤った。06、07年度とも歳入総額のほぼ20% 
を占め、06年度には地方交付税の不交付団体となった。村役場そばに近代 
的な施設が次々に建ち、村全体の統合小、中学校もできた。村の製造業と建 
設業の生産額割合は05年度がそれぞれ0.8%と25.3%。04年度で 
は0.4%と72.8%。公共事業への依存は極めて強い。        
                                   
 越善靖夫・東通村長は最終処分場受け入れについて「原子力施設を持つ市 
町村は廃棄物を出すわけだから、危ないからとよそへ持っていくわけにはい 
かない。検討しなければ」と話す。村議会も勉強会を作り、4月に議員16 
人中13人が岐阜県瑞浪市にある高レベル廃棄物処分の地下研究施設を見学 
した。候補地選びが難航するなか、関係者の目には「積極姿勢」と映る。  
                                   
 六ヶ所村は東通村以上に核燃マネー頼りが長い。07年度の歳入約101 
億円のうち20%は三法交付金、40%は再処理施設などからの固定資産税 
収だ。大湊茂・前六ヶ所村議会議長は「建設、土木関係業者で処分場を誘致 
したくないと言う人はいない」と語る。                 
                                   
 船橋晴俊・法政大教授が03年に六ヶ所村で行った住民意識調査では、7 
2%が「これ以上、放射性廃棄物を持ち込まないでほしい」と答えた。最終 
処分場について三村申吾知事は「大前提として県内に造らない」と話し、4 
月には甘利経済産業相が同趣旨の「確約書」を知事に手渡した。だが、最後 
は六ヶ所、東通両村の綱引きになるのではないか、とみる関係者もいる。  



(次ページに続く)