> したがって、火力発電に対して、キロワット時当たり10円程度の環境税
>を課すことは、十分に合理的なはずである。税の一部は、ソーラー発電に対
>する補助金に置きかえてもよい。たとえば、ソーラー発電への環境補助金5
>円、火力環境税5円とすれば、ソーラー発電は完全に競争力を得る。
 机上の空論に過ぎない。新技術を導入するときは、ある程度、コストは度外視しなければならないのも確かだ。しかし、時間的余裕を十分とってウォーミングアップ、つまり、緻密な開発が必要不可欠であるのは、特に研究者にとって考えておかなければならない。

> 政府の新エネルギー供給見通しでは、2010年の導入目標値はわずか
>500万キロワットである。しかし、NED○(新エネルギー開発機構)の
>調査によれば、国内の設置可能量は一戸建て住宅の7800万キロワットを
>含め、2億700万キロワットであり、政府の計画の40倍である。
 今後10年間で500万キロワットの発電容量といえば、原子力発電所の標準規模が1基あたり100万キロワットだから、5基分だ。この原子力発電所を5基建設するのだって並大抵ではない。ましてや開発途上の新エネで500万キロワットは至難の業だろう。ましてや、NEDOの可能性調査によるデータを引き合いに、今後10年の政府計画の40倍は可能だ、という主張は説得力に欠ける。

> しかも、NED○の計算では一戸建て住宅には各3キロワットの容量を割
>り当てているにすぎないが、某プレハブ会社が発売中の「ゼロエネルギー住
>宅」には一戸当たり9.9キロワットのシステムが設置されている。21世
>紀初頭については、屋根の南面だけを使っても現在の2倍、一戸当たり6キ
>ロワット程度は設置できるはずで、一戸建て住宅への設置可能量は7800
>万キロワットふえて、1億5600万キロワットになる。
 では、お二人の先生のお宅には、いくらのソーラーシステムを設置されているのか? またそれはいくら費用がかかったのか? ・・・などのデータを明らかにしないで、日本全国の一戸建て住宅に住んでいる人は、6キロワット程度のシステムを設置するべきだ、と言われてみても、余程家計にゆとりがあるご家庭でない限り、承服できかねる。「言うは易く、行うは難し」であることを忘れてもらっては困るのだ。

> さらに有望なのは、休耕田の活用である。1998年現在、全国の休耕田
>面積は29万8千ヘクタールあり、その量は毎年ふえている。ここにソーラ
>ーパネルを置けば、農家は遊ばせている土地を用いて、利殖をはかることが
>できる。電力会社への充電単価を11円としても、利子率は4%になるから、
>農協や銀行に預金するよりよほど有利である。
> かりに、資金の不足などから、この面積の2分の1程度しか利用できない
>としても、休耕田を利用したソーラー発電の設置可能量は、2億2400万
>キロワットになり、ソーラー発電総容量は5億900万キロワツトというこ
>とになる。
> これによって発電される電気エネルギーは、年間5360億キロワット時
>で、政府が2010年に予定している原子力発電の供給電力総量を上回る。
>ソーラー発電容量の3分の1に当たる1億7800万キロワットを2010
>年までに活用すれば、原子力発電は一切増強しなくても、発電による温暖化
>ガス排出を大幅に抑制でき、京都会議の温暖化ガス削減目標に近づくことが
>できる。
 学者の提案がここまで具体的になると、笑止千万と言わざるを得ない。議論する気力すら薄らいでくる。

 この先生方の主張の最大の欠点は、机上の計算ばかりで、実際にソーラーシステムをつくってみて、あらゆるデータを取りまとめたうえでの主張でないところにある。「机上の空論」「捕らぬ狸の皮算用」の類から一歩も出ていないということだ。こういう意見を取り上げた朝日新聞の良識も疑いたくなる。

> 2010年以降は、ソーラー発電をさらに拡充して、将来はドイツのよう
>に原子力発電を全廃することも考えられる。火力発電所の全廃はできないか
>もしれないが、国内の不足分や、太陽が照っていない時の電気供給は、揚水
>発電や外国のソーラー発電で作った水素を輸入することによってまかなえば
>よい。
 結局は、原子力開発をなんとしても止めさせたい、という深層心理がこのような主張を書かせたのであろう。しかも、応用物理学と経済学の先生2人の合作意見としては余りにもお粗末に思える。

 大変失礼とは思うが、真実味のない数字を並べ立て、新エネルギーの一面のみに脚光を当てる主張は、専門家でない大衆の心を迷わすだけには意義があるかも知れないが、専門家への説得は不可能である。

> 急ぐべきは、補助金・環境税などの制度を、将来を見据えて整備すること
>である。
 つまり、この学者先生、少しは良心の呵責に苛まれたのか、新エネのコストパフォーマンスは、政府や企業からの補助金とか、環境税のような新たな税金を、補填しないと将来はない、と最後に補足されている。とどのつまりは、新エネは、コスト的にはまだまだペイするまでには至っていないことを認めていらっしゃる。

 電力需要の相当の割合をカバーする規模のソーラーパネルを設置する場所は、何とか考えられたが、その費用は税金などで相当補填しないと、まだまだやっていけない、ということをおっしゃりたかったのだと、ここは好意的に解釈しておこう。

     「G研」代表