藤村 亮一郎(大阪学院大学教授・応用物理)
安場 保吉( 〃 ・経済)
> 政府は地球温暖化対策の決め手として、2010年までに原子力発電を59 >%増強することを計画している。しかし、原子力技術はまだ安定度が低く、 >とうてい現実的とは思えない。何を根拠に「原子力技術はまだ安定度が低い」とおっしゃるのか意味不明である。この論壇のお二人の先生の主張の論旨は、「ソーラー発電の開発が遅れているのは、日本政府が原子力発電の開発に過度の期待を寄せているからだ」ということらしい。
先発ピッチャーの調子が落ちたのではなくファンの人気が落ちたという理由で、次の中継ぎピッチャーに十分なウォーミングアップをしないまま交代させるのは無謀である。先発の原子力は、調子が悪いのでもなく、ましてや技術の安定度が低いわけでもない。国民の人気が、一部のマスコミや過激な反対派の偏った情報により、多少落ちているに過ぎないのだ。
まだまだウォーミングアップが充分でない新エネを、無理に原子力を降ろしてまで進めようとは、いくら原子力嫌いで新エネ信奉者といえども、素直に見過ごすわけにはいかない。
もし、お二人の教授がおっしゃるように、原子力の技術の安定度がまだ低いなら、日本の総発電量のうち、原子力発電に4割もの重責を負わすことはとうていできないはずだ。
> 政府がこのような対策を立てざるを得なかったのは、従来、ソーラー発電 >などの代替エネルギーのコストが高く、その普及の見通しが立たなかったた >めである。が、ここにきて、ソーラー発電のコストが近い将来、急速に低下 >する見通しが定着してきた。政府の見通しでも、2010年までには、キロ >ワット時当たりの電力コストは25円になる。しかし、コストは、システム >の生産規模が大きくなれば大幅に下がるはずで、生産規模次第では、キロワ >ット時コストは2010年までには21円にまで下がる。ここで早くも論旨の矛盾が露呈している。つまり、「2010年までに原子力発電を59%増強する」という政府の見通しは間違っており、おなじ「2010年までにソーラー発電コストがキロワット時当たり25円になる」という政府見通しは正しいというのは、あまりにみ身贔屓過ぎる。21円でも原子力の2倍強だ。それでも2010年までに原子力を増強するという政府見通しは現実的でないという主張こそ、「現実的」でないと言わざるを得ない。
> ここまでコストが下がると、火力発電のコスト11円との差は、環境破壊 >度の差の範囲に収まることになり、政策的に対応することが可能になる。欧 >州委員会によると、発電に際しての環境破壊コストは、ソーラー発電がほほ >ゼロなのに対し、火力はキロワット時当たり10円である。最初に原子力に矛先を向けておきながら、環境とコストで太刀打ちできそうな火力発電を槍玉に挙げつつ論旨を進めている。しかも、環境保護団体の活動が盛んで、政治の中にも深く関わるようになったヨーロッパの機関が出した環境破壊コストをストレートに参照することは、大いに危険を伴うことをご存じないのだろうか。