本文のあちこちにも不適切な用語、現象を正しく表現せず、意図的に大袈裟に表現して読者の恐怖心を煽っている部分も見られる。全部を洗い出すのも大人気ないので、主なところを指摘しておこう。

<前文>
 > これまで「地震への対策は万全」と説明されてきた原発。しかし、さ
 >る7月、東京電力福島第一原発で、地震による細管破断事故が起きてし
 >まった。それも、たった震度4という「想定外」の揺れで・・・。この
 >恐怖の事実をどう受け止めたらいいのか。
 「地震による細管破断事故」とはいかにも大袈裟な表現である。小口径管は長い年月を掛けて亀裂が入っていたのであって、一回の地震で一度に「破断」したのではない。「破断」と表現する場合は、配管が一気に切断されたような状態、例えば「ギロチン破断」といったように表現する。この用語の持つ意味を正しく理解していてこの記事を書いたなら、まさしく「意図的な記事」といわざるを得ない。

 また、「事故」という言葉が原子力発電所に関して特に頻繁に使われているが、心臓部ではなく、付録のまたその付録部分の細い管に亀裂が入ったくらいでは「事故」と表現するのはいかにも大袈裟すぎる。せいぜい「事象」とか「故障」程度に表現するのが妥当だと思っている。寒い冬の朝、室外の水道管凍って亀裂が入るが、この場合、「わが家の水道管が亀裂事故を起こしてね」とは表現しないだろう。

 「たった震度4の<想定外>の揺れで・・・」もおかしな表現だ。原子力発電所の耐震設計では、過去の地震や地質の調査を行って考えられる「最大の地震などを想定」して行っているのである。そうでなければ安全許認可はもらえない。福島第一原子力発電所の耐震設計の場合、1646年に起こった陸前地震がマグニチュード7.6であったことが古文書などで分かっており、その地震などを想定して耐震設計を行ったのである。よって、震度4など「想定外」ではなく、十分「想定内」に入っている。

<P.135の左上から>
 >「ネジの溝が切られている配管で、かつ熱変位による応力が生じる可能
 >性のある部分」
 > の洗い出し&チェック作業にいち早く取り掛からなければならないは
 >ず。しかし東電によると、そのすべてをチェックするには最低でも2〜
 >3年はかかるのだとか。おいおい・・・。
 >「これが大体、数千カ所ぐらいあるかと。何回かの定検(定期検査)に
 >分けて計画的にやるとしても・・・ただ、10回とか20回とかに分け
 >てやるつもりは全くない」(五十嵐課長)
 「ネジの溝が切られている配管で、かつ熱変位による応力が生じる可能性のある部分」は、東京電力の原子力発電所に限って洗い出せば、福島第一6号機のクロスアライアンド管逃し弁の小口径配管6箇所と、福島第一2号機のクロスアライアンド管にある逃し弁の小口径配管6箇所の計12箇所が該当すると判明した。

 それらの配管は、上で述べたように取り払っても何ら問題がある配管でもないため、12箇所の配管は既に取り払っている。

 東京電力の原子力発電所にある小口径配管のうち、運転に影響を及ぼし、取り払うことができないもので、「振動や熱変位による疲労が考えられる継ぎ手部」は1プラント当たり<数千箇所>あるが、これらはいままでも定期検査で点検してきたが、今後はより念入りに点検することになろう。

 記事では、福島第一6号機で亀裂が発見された小口径の配管と同様の配管が数千箇所あるかのような表現になっているが、事実は12箇所だけで、それらは全部取り払っても安全性に支障を来す配管でないため、既に取り払って運転を再開したのである。

 だけど、どうしてこうもトンチンカンな受け取り方をするのだろうか。もしこういう事象をいい加減に手抜きで運転を再開しており、それが近い将来、安全性に問題が起こり得るなら、それによって不利益を被るのは誰あろう電力会社自身であるため、余所から指図を受けるまでもなく、念には念を入れて点検し、点検結果に満足が行くまで運転を再開することは<絶対>にない。

 地震学の教授をはじめ、反原発運動のリーダーなどから、今回の福島第一6号機の小口径配管の亀裂が見つかったことで、原子力発電所を長期に止め、耐震設計の基本から見直せ、といったご丁寧な忠告を引き出して書いてくれているが、本当に原子力発電所を安全に運転を続けることを願ってくれているなら、もう少し、専門家も説明を素直に聞き、安全哲学から安全システムのからくりまでしっかり勉強してから、原子力問題の記事を書いてもらいたい。

    「G研」代表