何ともセンセーショナルなタイトルを付けたものである。

   ××東京電力が初めて認めた××「地震で原発は壊れる」

 ルポライターという職業は、真実を伝えるジャーナリストではないのだろうか。正義の味方とまでは行かなくとも、平均的なジャーナリストなら、誰が、いつ、何処で、何を、どのように証言したのか? いわゆるジャーナリストが取材して記事を書く場合、who、when、where、what、howを織り込むのが基本だと理解していた。しかし、このサンデー毎日の「明石昇二郎」と名乗るルポライター氏は、センセーショナルなタイトルを付けて読者の目を引きつけながら、本文ではタイトルの補足説明はまったくない。

 センセーショナルなタイトル、内容のない本文、週刊誌の記事の典型例で、いまさら目くじらを立てる必要もないのかも知れないが、政治経済から科学技術などまじめに考えなければならないテーマも、引っ付いた離れたの覗き見趣味的芸能ニュースと同列に陳列される週刊誌が、主要な情報源を担っている日本人の習性を考えるとき、無視してすませるわけにはいかない。

 このサンデー毎日の記事には、原子力関係者があたかも原子力施設の耐震設計が不備であることを認めながら、運転を止めて設計のやり直しすらしようとしていない不誠実な連中という印象を読者に植え付けようとする悪質な意図があると、残念ながら考えざるを得ない。

 はっきり言っておこう。原子力発電所の特に心臓部は、想定される最大規模の地震にも余裕をもって耐えられる設計とその耐震設計に基づく施工が施され、それぞれの段階で厳しい許認可を受けている。

 したがって「地震で原発は壊れる」なんてことは東京電力を始め、通産省など規制当局も含め、原子力開発にたずさわっている関係者は誰も認めてはいない。極めて低次元なデマ情報であると明言しておこう。

 そもそも事の発端は、去る7月21日、茨城沖地震が発生した後、東京電力の福島第一原子力発電所6号機のタービン室に設置されている気体廃棄物処理系の気体流量が普段より増加したため、原子炉をわざわざ手動で停止し、その原因を調査した。少しでも危険が伴うかも知れない部類の現象なら、原子炉は運転員が手動で停止する前に自動的に停止するようになっている。軽微な現象でも停止させたのだから「わざわざ」と表現した。

 高圧タービンと低圧タービンをつなぐ蒸気配管(クロスアラウンド管)の圧力が何らかの原因で上昇した場合、配管の健全性を保つため、蒸気を直接復水器へ導く逃し弁が6台あるが、その逃し弁が作動しやすいように弁の中の圧力を下げるための細い配管(外径34mm)がそれぞれの逃し弁に接続されている。

 蒸気配管の圧力が万一上昇した場合の安全性のため、逃し弁が6台も付設されており、その逃し弁が万一うまく作動しなかった場合の安全性のための小口径配管、その1本に亀裂が入っていたのを前回の定期検査などで見つけられないまま、今回の震度4の地震のあと、亀裂が大きくなって空気が抜けて発見された、という事なのである。

 このことは、例えば、棚の上の人形の首が取れていたのをそのまま元に戻して飾っていたところ、地震が起こって首が転がってしまった。首が正常につながっていたなら、その程度の地震では取れないのだが、あたかも地震で首がもげたかのように転がり落ちてしまった、というような事象であったのだ。これは、地震が起こらなくても、例えば、家の前の道を大型ダンプカーが通っても人形の首は落ちたであろう、という程度なのだ。

 それを「人形の首」ならぬ「鬼の首」でも取ったかのような記事をルポライターが関係者から取材して書き、大仰な内容の原稿を持ち込んで、「サンデー毎日」の編集長も真実を確認せぬまま掲載したものと考える。しかし、我々関係者にしてみれば、こういう記事のたびに反論せねばならず、大いに迷惑を被っているのである。

 迷惑に感じる最大の理由は、週刊誌といえども全国誌のブランドがものをいい、そこに掲載された記事をたまたま読んだ読者が、「内容は疑わしいが、有名新聞社発行の週刊誌がウソ偽りの記事を堂々と掲載するはずはない。ましてや賛否の決着していない原子力問題に関して一方に組みするような不公平は、立場から情報をでっち上げるはずがない」といったイメージでもって捉えかねないからである。

      (次ページに続く)