「茨城沖地震でわかった!? <原発震災>の切実性」

       「週刊朝日」2000年8月11日号

 このところ、特に関東地方で地震が頻発しています。地震にも地下のマグマの胎動で起こる火山性地震と、プレートといわれる地殻の変動などによって起こる地震とがあります。北海道の有珠山の噴火による地震や、伊豆諸島近辺の地震は火山性地震です。阪神淡路大地震などは地殻変動による地震ですが、活断層が横たわる地域にはこの種の地震が多いといわれています。

 このように地震が多発していますと、次は自分たちの街が大地震に見舞われるのではないかと、ついつい悪い方に想像してしまいがちです。そう思ったら大災害に備えて防災対策を万全にすればいいのですが、そこまで行動する人は少ないのではないでしょうか。

 こういう時に限って、人間心理を突いて恐怖感を煽る記事などがマスコミを賑わせます。「週刊朝日」8月11日号の表紙に「関東直下大地震、<遠からず>の不気味」という見出しが踊っています。これなど「恐怖感を煽る」典型的な記事で、この表紙や、雑誌の吊り広告などを見てこの週刊誌を買った人も少なくないのではありませんか。そういう私も、関東に草鞋を脱いでしまっている関係で、恥ずかしながら買ってしまいました。

 買ってしまってから気付いたのですが、「関東直下大地震」の特集記事の付録として、なんと「茨城沖地震でわかった!? 原発震災の切実性」と題する1ページの記事がありました。

 確かに、7月21日午前3時39分、茨城県沖を震源とするマグニチュード(M)6.1の地震がありました。そこから約100キロも離れた東京電力の福島第一原子力発電所でも、震度4か3程度の揺れを感じました。作りつけが悪い棚の上の花瓶が倒れ落ちる程度でしょうか。

 日本の原子力発電所の施設は、平均して関東大震災や阪神淡路大震災クラスの約2倍(安全性の重要度に応じて耐震設計を講じている)の揺れにも耐える耐震設計で建てていますから、いくらなんでも震度4程度の揺れではビクともしません。もちろん原子炉の運転は継続していました。

 揺れが関東大震災程度の大きなものが来ますと、原子炉は自動的に制御棒が炉心に入って止まる(スクラム)ことになっていますから、この段階での運転員の失敗による事故は起こり得ないように設計されています。

 このように地震国日本の原発は、他の安全性もそうですが、特に耐振性に関して、我々技術者は自信を持っています。よく冗談混じりで原発周辺の住民の方々に話しているのですが、「大地震に見舞われたら発電所にいらっしゃい。これはどの建物より安全です」と。

 しかし、その強固な原発といえども、「作りつけの悪い棚」も1つや2つはありましょう。貴重なものを乗せる棚、来客の目に付く所の棚なら、大工さんに来てもらって作るでしょうが、キッチンの棚などそれほど重要でないものを乗せる棚なら、休日で寝ているお父さんのお尻を叩いて「日曜大工」をさせて作ってもらうのではないでしょうか。原子力発電所にも、「作りつけの悪い棚」に匹敵する箇所はありますが、それは安全性には何ら問題がない箇所ばかりです。

 でも、グラっと揺れた地震で落ちたわが家の棚なら、「お父さんてダメねー」と笑ってすみますが、原発のいかなる「棚」も落ちたりすれば、それがいかなる理由があろうと、原子力開発に常日頃から批判的なマスコミなどはとくに、「それみたことか」と書き立てます。

 「週刊朝日」のP.26の記事はその典型的なものといえましょう。原発震災の記事は1ページだけの簡単なものでしたが、簡単なだけに無責任な表現が目立ちます。多少なりともご説明しておきましょう。

 福島第一原子力発電所の6号機が、7月21日未明、茨城県沖地震の発生直後、気体廃棄物処理系の流量が増加したため、原子炉を手動で停止して調査しました。その結果は、8月2日の東電のプレス発表で明らかにしています。

 タービン建屋内にあるクロスアラウンド逃し弁に付属的に取り付けた小口径配管(外径34mm)の取付部に割れが生じており、そのすき間から吸い込まれた空気が復水器を通って気体廃棄物処理系の流量を上げていたことが判明しました。

 で、クロスアラウンド逃し弁に取り付けていた小口径配管が、ちょっとした地震で何故割れたのか、これも調べて分かりました。この配管を逃し弁に取り付けるネジの谷部が、通常のネジに比べ鋭角に加工されていたため、割れが生じやすくなっていました。しかも、長年の運転、停止の繰り返しによる熱変位で取り付け分に応力が生じ、割れがネジ谷部から発生し、ネジ全周に進展してほぼ貫通していたところに、最終的に地震の振動を受けて口が開いたものと推定されます。

 この小口径配管は、逃し弁の作動を安定させるため、念のために設置しているもので、撤去しても逃し弁の機能上問題となるものではないため、6本の付属小口径配管は全て撤去することになりました。

     (次ページに続く)