電気新聞(2006年1月30日)

<ウェーブ=時評>

         グリーンピースと資金

                          中村 政雄

                          (元読売論説委員)

(その1)


 何故、世界には、反原子力派なる団体が少なからずあって、執拗な活動を続 けていられるのか?

 答は簡単である。そういった団体に資金を提供する金持ちがいるからである。 その一つは、原子力開発が進まず石油の需要が伸びて価格が上がり増収が見込 める石油輸出国であり、いま一つは、企業イメージを高めるため環境保護に熱 心だというポーズを公に見せたいという財閥である。

 こういった情報を我々は以前からつかんでいた。彼らとちょっと親しく交流 を持てば、本音が聞かれ、内情も簡単にキャッチすることができる。

 反原発で世界的にも有名で、しかも最近までドイツ政権の中にあって、原子 力を排除した地球温暖化抑止政策を立案し、京都議定書の作成にも深く関わっ てきたグリーンピースの大幹部であったパトリック・ムーア博士が、グリーン ピースを脱退するとともに、反原発から一転「親原発」に変わったことを吹聴 して回っているという。

 ムーア博士なる人物は、「カナダの大学で生態学を学び学位を得た。学生の ころからヒッピー・スタイルで核実験に反対し、反捕鯨の闘士だった。20年 前にグリーンピースを離れた」そうだ。

 何故原子力に反対してきたのか? 「若いころは原子力の軍事利用と平和利 用の区別がつかず、原子力を利用すれば必ず兵器の開発に結び付くと思って反 対した」というのだ。

 では何故、反原発から親原発に転向したのか? 「原子力は安全で、環境に 対しクリーンであることが分かった」からだという。

 原子力の軍事利用と平和利用との区別もつかなかったほどの頭脳の持ち主が、 原子力の安全性とか環境にやさしいエネルギーだということが、そう簡単に理 解できるだろうか?はなはだ疑問である。

 また、「グリーンピースが年金制度を設けたことにも疑問を持」って嫌気が さしたというが、どこかの国の国会議員でも議員年金なるものを固執している ように、ましてや非営利団体の活動家たちの生活基盤、とくに引退後の生活が 安定するシステムを要求するのは当然ではないだろうか。そういうことを脱退 の理由に挙げて公言すること自体、おかしい。

 いま、我が国の原子力界は、内部告発を歓迎する風潮にあるが、これはゆゆ しき問題と我々は考える。グリーンピースのことを知りたければ、ドイツの本 部にでも乗り込んで堂々と議論してくることである。

 また、行政や産業界から原子力広報の依託を受けている社会経済生産性本部 が、かつての反対派の幹部を招待して、反対の論理や反対派の活動資金源など に関する話を聞くなどといったことは如何なものかと思えてならない。

 しかし、こういった情報は、マスコミが公正な立場から取材して、一般紙や テレビなどを通じて報道するということは、極めて重要である。日刊紙の論説 委員まで勤められた中村氏なら、専門家が読む業界紙に投稿するのではなく、 願わくば、一般国民が正しい判断ができる参考情報として一般紙に投稿しても らいたい。

 原子力業界が国民から信頼される業界になるためには、その中で働く者たち が、正々堂々と悪いことは悪い、正しいことは正しいと発言できる業界でなけ ればならないはずだ。また、原子力に反対する人たちがいれば、相手の内情を あえて事前に知りたいと考えることなく、日頃の考えで論破できなければなら ないのである。

              「G研」代表

(次ページに続く)