朝日新聞(2005年6月17日)

<私の視点>======福島大経済経営学類教授(財政学)清水 修二

    ◆[電源特会] 原発の是非とは別に論議を

(その2)


 我々も電気を消費しているから、我々が支払っている電気代の中にこの税金が含まれていることに不満が言える立場ではない。しかもその税額が、平均世帯で月額120円、年間にすると1440円と、わずかな額ではないか。これが電源地の発展に使われ、しかも地元の方から喜んでいただけるなら、こちらも喜んで払おうではないか。

 「古典的な予算原則の一つに「特定の収入を特定の支出に結び付けてはならない」というルールがある。「目的税はつくるな」ということである。この原則の重要性を、電源特会の歴史と現状は雄弁に物語っている」と清水先生は力説されている。

 こういうルールがあるとは知らなかったが、これはあくまでも「古典的」な予算原則のルール、と清水先生もあえて説明されている。よって、現代の予算原則に照らしてつくられた「目的税」だから、何ら問題はなかろう。しかもこの「目的税」は、「電源特会」のみに止まらず、「ガソリン税」など「目的税」は他にいくつもある。

 ただし、この目的税による税収が集まりすぎたり、途中で歪んで使われたり、また、地元が望まないことに使われたりしているなら、そこには改善の余地は当然あるだろう。

 すなわち、電源特会は、原発を含めた電源開発のためにある。原子力に反対する人たちにとっては、「地元はこの電源特会の支給を受け取るために、イヤイヤ原発を引き受けている」と思いたいのであろう。しかし、それはまったく逆だと思う。

 「日本の経済や国民の暮らしを支える電気をわが町の発電所から供給している、その消費者の感謝の気持ちとして電源特会からの支給がある」と。

 「しかし、そのことと、発電所の立地にまつわって巨額の税金が動く仕組みを容認することとは、別の事柄のはずである」

 「別の事柄」とするなら、「消費者から感謝の気持ちは受け取らないで、原発を引き受けるべきだ」と、先生は地元の人々にいっているのと同じである。そのことにお気づきだろうか。

 それとも、地元の地域開発のための特別な予算を計上しないで、新規の発電所を引き受けてくれる方法が他にあるということだろうか。対案を提起しないまま原発立地の有効手段である電源特会を批判することは、あまりにも無責任といわざるを得ない。

 電源立地の周辺自治体が、例えば原発を引き受ける見返りとして、電源特会から支給される地元の開発予算は、何の遠慮も不要、卑屈になる必要性もなく、胸を張って受け取ってもらいたい。そして原発を「おらが町」に誘致したことにより、地元も見違えるように良くなったと自他ともに認められるような目的に有効に使ってもらいたい。

              「G研」代表

<本文転載>

 電源開発促進対策特別会計(電源特会)の無駄遣いが問題になっている。
この問題と構造と性格について述べてみたい。             
                                  
 この特別会計は74年、電源開発促進税(電促税)という目的税を経理 
するために発足した。石油ショックを機にエネルギー安全保障が課題にな 
る中で、新鋭を導入し、発電所の立地を受け入れた地域に補助金として給 
付することによって「国民的利益を地元に還元する」のが制度の趣旨だっ 
た。端的に言えば、「迷惑料」の給付システムだ。

 電源3法制度と呼ばれるこの仕組みは、原発をはじめとする電源立地の 
促進にかなり貢献したものと思われる。
                                  
 しかし、この仕組みは発足以来、およそ30年がたった。この間に大小 
の原発事故やトラブルがあり、また不況による電力需要の低迷もあって、 
発電所建設は足踏みを続けている。発電所の立地を前提としてつくられて 
いる電源特会、正確にはその電源立地勘定は、出口が狭隘化してダブつく 
ようになった。                           
                                  
 カネが余るなら減税すればいいようなものだが、電促税は目的税であり、
経済産業省と文部科学省の専有財源で既特権化しているから、なかなか減 
税とはならない。政府はかえっていろんな補助金を次々に新設することで 
過剰な収入を費消することに腐心するようになった。個々の補助金の使い 
方もそういう中でルーズになったと考えられる。            
                                  
 発電所の建設が地元の地域経済の発展に期待したほどの効果をもたらさ 
ないという事情も、あの手この手の補助金乱造の背景になっている。原発 
の新規立地に期待がもちにくい中で、既設地点での増設を誘導するための 
補助金の創設が最近は目立つ。また、発電所ばかりでなく高レベル放射性 
廃棄物の処分場の立地促進にも、この特別会計が使われようとしている。 
                                  
 国は01年度に電源3法交付金の政策評価を行い、03年度に法律を改 
正した。若干の減税をするとともに、補助金の交付対象から火力発電を除 
いた。                               
                                  
 また「周辺地域整備資金」というプールをつくって、電源立地勘定の外 
で剰余金を経理することにした。04年度はこの資金に530億円が繰り 
入れられている。表面的にはそれだけ同勘定の剰余金は減った形になるが、
実態は何も変わっていない。                     
                                  
 古典的な予算原則の一つに「特定の収入を特定の支出に結び付けてはな 
らない」というルールがある。「目的税はつくるな」ということである。 
この原則の重要性を、電源特会の歴史と現状は雄弁に物語っている。   
                                  
 国民生活や国民経済に電力が不可欠である以上、発電所の建設は避けら 
れない。目下の政府の電力政策は原子力が柱になっており、また国民の多 
くは原子力発電を「不安だけれども必要なもの」として消極的に受容して 
いる。                               
                                  
 しかし、そのことと、発電所の立地にまつわって巨額の税金が動く仕組 
みを容認することとは、別の事柄のはずである。            
                                  
 大体、電促税という税金(平均世帯で月120円程度)を自らが負担し 
ていることを、ほとんどの国民は知らない。税痛のないところには支出へ 
の関心も生まれない。国家財政の無駄をなくすという問題もさることなが 
ら、発電所の立地を「カネずく」で進める方法の是非こそが、いま論じら 
れなければならない。