読売新聞(2005年5月27日)

<論 点>========>中上英俊(住環境計画研究所所長)

[省エネルック、夏時間]

      温暖化防止の“即効薬”期待

(その1)


 この住環境関連の研究所の所長さんは、地球温暖化防止の即効薬として、夏の男の背広に代えて省エネルックを着て、いつもより1時間早く出勤する夏時間を採用することとおっしゃっている。

 これを小泉首相の号令一過、日本人全員が一斉に行えば、地球温暖化を止めることなんかちょろいものだとおっしゃっている。本当にそうだろうか?

 省エネルックやサマータイムが、温暖化問題の国民意識を高めるためのちょっとしたパフォーマンスという考えなら、少しは評価もしよう。しかし、このエネルギーや地球環境が専門とおっしゃる60歳の研究所の所長さんが、「現実的で即効性のある二つの提案」というキャッチフレーズを大上段に振りかざしてのご提案となると、我々としても放置できなくなった。

 省エネルックもサマータイムも我々は闇雲に反対しているものではなく、地球温暖化防止に多少は役立つかも知れないとも思っている。ただ、省エネルックはともかく、サマータイムは「労して功無し」とはっきり申し上げられる。アメリカで長年体験してきた者が明言するのだから間違いない。それにしても「皆一斉に」という意識を変えないことには、どれも実効性は乏しいままだろう。

 とりわけ日本人は、個性を発揮することには躊躇する性格がある。皆が着ているから暑さも我慢して夏も背広、始業時間も他社やお役所に合わせて横一列に同じ、休日も国が祝日と決めてくれないと休めない・・・といった悪習慣を取り除くことが先決だろう。

 地球温暖化という人類史上最大の危機に直面しているといっても決して過言でない現象を阻止しなければならないというとき、その防止に効果などまったく期待できない省エネルックやサマータイムなどに、誰が号令してもつき合う気は毛頭ない。

 もっとも我々は、夏はネクタイなどはずして半袖シャツ、それに年輪を重ねたからか外が明るくなると同時に目が覚めるから仕方なく電車も空いている早朝出勤をしている。

 これ以上省エネルックにしなければならないとなると、「山下清スタイル」で出勤しなければならないと考えている。また、サマータイムが採用されると、せっかく空いていた通勤電車もまたまた混んでくるから、早朝電車からクーラーをフル稼働してもらわなければならなくなるだろう。

 もっとも、かのホリエモン氏に代表されるように、今の若者はネクタイ背広のスタイルからとっくに脱皮している。それにエアコンの温度調節の実権が女性社員に握られているオフィスがほとんどだから、それでも我慢してネクタイ背広を着用していようものなら首から臀部にかけて汗疹に悩ませられること請け合いだ。

 だいたい、地球温暖化を阻止できる即効薬などない。あえて見つけるなら二酸化炭素を排出しないで大量の電気をつくることができる原子力発電である。しかし、残念ながらこの原発、一般国民から絶大なる支持を得ていないから、民主主義の国の日本ではなかなか開発が進まない。よって即効性はあっても現実的ではないのである。

(次ページに続く)