[4段目から5段目にかけて] > 原発を減らそうとすれば、原発がまかなっている電力をどうするか。温暖 >化防止のために二酸化炭素の排出量を減らすという国際公約を守るにはどう >するか。それぞれに具体的な対策が必要になる。ここでの指摘は最も重要なことです。ただ、省エネルギーを進める上での最大のネックは、「みんなでやればできないことはない」「誰かがやってくれるだろう」的発想なのです。「自分はこんなにやれたから、みなさんもできるはず」という主張でないと、まったく説得力はありません。
> 市民生活への影響も避けられないだろう。不便に耐えたり、生活レベルを >落としたりする覚悟はあるか。景気にマイナスの影響がでてもいいか。国民 >的な議論抜きには決められない問題ばかりだ。そうなのです。まず朝日新聞社が範を示していただきたいのです。昨年までの毎月の消費電力量を提示し、今年一年間で、どれだけ減らすことができたか、来年の今ごろデータが出ることでしょう。いや、すでに過去5年間ほどで、原発が占める割合の40%は省エネに成功されているかも知れません。どうぞそういうデータを示していただきたいのです。「虚構の省エネ」とならないことを願っています。
[5段目] > 電力会社の立場からみても、投資額が巨額で、立地から運転開始までに長 >期間を要する原発の建設は、いまやリスクの大きい投資になっている。電力 >事業の自由化がさらに進み、コスト面での競争が激しくなれば、経営者は原 >発の増設にはもっと後ろ向きになるとの見方さえある。まさしくその通りなのです。日本の電力会社の経営者は、本当によくやっていただいたと思っています。身近で見ていても、「投資額が巨額で、立地から運転開始までに長期間を要する原発の建設」など、やりたくないと何度思われたことでしょう。海外の電力会社の中には原発建設から手を引いた経営者が何人いたことでしょう。日本のマスコミなどは、原子力開発から撤退する海外の電力会社に対して、「原発の安全性に問題があったから止める勇気ある決断」と報じるところもありました。撤退した本当の理由は、この朝日の社説が指摘しているとおりなのです。
しかし、日本の電力会社の経営も、この3月から自由化の波が押し寄せており、厳しい局面を迎えようとしています。数年前から電力の卸事業の自由化が始まっており、すでに何社かが独立系電気事業に参加してきています。そのどれも建設がやさしい火力発電で、原発などやろうというところは出てきていません。
日本の従来の電力会社の経営者が原子力から手を引かなければならない事態に追い込まれる前に、われわれ原子力技術者をはじめ、原子力のことを正しく理解していただく方々を増やしていかなければならないと考えます。そのためにもわれわれへの国民の皆さまの信頼回復が何よりも重要と痛感しております。
[6段目最後] > 今回の事故と不幸な死は、国民全体に「原子力開発は危険なものである」 >という共通認識をつくった。根本に立ち返った議論は、その土俵の上でこそ >できる。核分裂反応から取り出した莫大なエネルギーを利用する原子力は、もちろんリスクを伴いますが、人間が管理できない技術ではありません。世界で4百数十基、日本で52基もの原発が運転されていることで十分そのことは証明されていると考えます。
国民の皆さまに原子力の持つリスクも理解していただかなければなりませんが、同時にベネフィット(利益)も正しく理解していただかなければなりません。そうでなければ自分自身や自分の子孫たちが不利益を被ることになるからです。
この朝日新聞の社説の最も大きな矛盾点は、問答無用に「原子力開発を止めるべきだ」という主張が行間にはっきりと見えているにも関わらず、これからのエネルギー問題や原子力問題、環境問題について国民全体で議論を展開しよう、と主張していることです。
「原子力は危険だし、経済性にも疑問が出てきたので止めるべきだ」という主張なら、止めてどうするのか、具体的に代案を提示するべきです。「とにかく原発は止めて、みんなで智恵を出し合えば何とかなる」では、あまりにも無責任すぎるのではありませんか。
「G研」代表