朝日新聞(2004年7月3日)

<時時刻刻>

   経済性 揺らぐ信頼

         核燃料サイクル割高試算

(その1)


 核燃料サイクルは、使用済み核燃料の直接処分より2倍近く割高とする 
旧通産省(現経済産業省)の試算の存在は、核燃料サイクルを堅持してき 
た日本の原子力政策を揺るがしかねない。政府や電力業界が「両者の経済 
性の差はわずか」としてきた説明の信頼性が失われるためだ。青森県六ヶ 
所村に建設中の再処理工場のウラン試験が焦点となる中、詳細なデータ比 
較が求められる。                          
 発電コストの試算は、金利予測や需要予測など、インプットする条件が少しでも違えば、大きな差が出てくる。これは、いま話題の年金の試算で、将来の出生率が違えば結果は大きな狂いを生じるのと同じだ。

 電源別発電コストにしても、計算を試みたグループが、原子力反対派か推進派かによってずいぶん違った結果をもたらしてきた。

 もちろん政策を論じるに際して、できるだけ詳細で正確な試算が重要であることに異論はない。ただそれが後々まで正確さを保ったまま有効な資料とはなり得ないのだ。

 使用済み燃料を再処理するか、あるいは直接処分するか、二者択一を国の政策として決定する段階で、両者の経済性も含めた検討がなされたかどうかが重要である。しかし、その政策を完遂させるまでに長年月を要する案件はとくに、たとえその政策決定に不備が見つかったとしても、それが国家の屋台骨を揺るがせるほどの重大な支障を来すものでない限り、変更してはならないのである。

         (次ページにつづく)