朝日新聞(2004年3月22日)

<社説>======================>[プルサーマル]

        サイクルに踏み込むな

(その2)

 トラブルや不祥事で生まれた安全性への不安を解消することが欠かせな 
いが、そもそもプルサーマルは必要なのかという疑問があることも忘れて 
はならない。                            
 プルサーマル計画は国是だから、いまさら疑問を挟む余地はない。

 差し迫った事情は確かにある。日本の原発から出た約7千トンの使用済 
み燃料は、委託した英仏の工場での再処理がほぼ終わり、約33トンのプ 
ルトニウムが英仏で保管されている。                 
 現状認識は正しいようだ。

 この分は日本が引き取るしかない。核兵器の原料にもなるプルトニウム 
をためないとの国際公約を守るには、プルサーマルで消費することも現実 
的な選択だろう。                          
 プルサーマルは、プルトニウムを平和目的で有効利用するための一つの方法に過ぎない。この技術をいつでも使えるようにしておくため、商業炉での使用を急がなければならないである。

 しかし、いま問われているのは、プルトニウムの積極的な利用に踏み出 
すべきかどうかという大きな問題だ。                 
 プルサーマルは、プルトニウムの積極的な利用ではない。我々原子力技術者からいわせれば、むしろ「消極的な利用」の部類に属する。では真の「積極的な利用」とは、プルトニウムを消費する以上に生産するよう設計された高速増殖炉の燃料として利用することである。

 ほぼ完成した青森県六ヶ所村の再処理工場で、いま国内にある使用済み 
燃料を新たに再処理してプルトニウムを作り出すかどうか。これは、すで 
に海外で処理済みのものとは分けて考えなければならない。       
 使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムは、海外で処理されようが、国内で処理されようが、まったく同じで、分けて考える必要性はまったくないと考えるが・・・。

 日本は使用済み燃料をすべて再処理し、できたプルトニウムを高速増殖 
炉で使う「核燃料サイクル」をめざしてきた。しかし、高速増殖炉が実用 
化する見込みがないのに、そこへの「つなぎ」と位置づけられてきたプル 
サーマルを、なし崩しに進めていいのだろうか。            
 高速増殖炉の実用化する見込みがなくなったわけでは決してなく、いずれは資源の有効利用の観点から、高速増殖炉に頼らなければならない時代が間もなくやってくる。  プルサーマルは、高速増殖炉への「つなぎ」という位置づけもできようが、それに限らない。現在運転中の軽水炉の燃料は、ウランと限定するより、プルトニウムもウラン同様、いつでも使えるように技術の蓄積も重要である。

 プルサーマルはウラン資源の節約もそれほど期待できず、普通のウラン 
燃料よりコストが高い。六ヶ所再処理工場が動き出せば、大きな投資が必 
要になるMOX工場の建設につながるという問題もある。        
 軽水炉の燃料として、ウランの他に、プルトニウムも加われば、ウランの輸入状況に応じて、両者を切り替えることが可能になる。現時点では、ウラン燃料もそれほど高くないから、プルトニウムを軽水炉の主要燃料にすることは経済的でない。しかし、将来、ウラン資源が枯渇したり、高騰すれば、プルトニウムに切り替えることも可能なのだ。

 MOX工場は、何も軽水炉用燃料加工工場にとどまらない。将来、高速増殖炉が実用化され、その燃料の加工が必要になってきたとき、その工場が有望になってくる。高速増殖炉の燃料も、軽水炉の燃料の設計は異なるが、ウランとプルトニウムの混合酸化物であるMOX燃料に違いはない。

 ここは再処理工場の運転開始をいったん凍結し、サイクル政策全体を見 
直すべきである。その中でプルサーマルの役割と意味をもう一度位置づけ 
ることだ。                             
 遅れに遅れた再処理工場の運転開始を今さら凍結する必要性はまったくない。再検討する必要性があるなら、その大幅に遅れた時期に検討する時間は十分にあったはず。

 核燃料サイクル政策におけるプルサーマルは、それほど重要に考える必要はない。高速増殖炉への「つなぎ」と考えるのでもいいし、軽水炉燃料、ウランの「代打要員」と考えてもいい。つまり、「役割と意味」などと、プルサーマルを大上段に構えて考える必要はまったくないのだ。

 何故なら、再処理で取り出したプルトニウムは、元々軽水炉の中で生産されていたから、そこへ戻すことがプルサーマルだから、プルトニウムにとっては里帰りするようなものだ。また、生産と同時に核分裂反応もしていた所だから、MOX燃料が入れられても、ウランばかりを燃料とした軽水炉も、MOX燃料を混入させた軽水炉も、運転上も安全性もほとんど変わりはない。

 再処理工場を動かさないと、増え続ける使用済み燃料の置き場所が不足 
する。中間貯蔵施設の建設や原発内でしばらく保管する道も同時に探るべ 
きだ。                               
 先にも説明したように、MOX燃料加工工場の投資には、プルサーマルに限定したものでなく、高速増殖炉の燃料加工にも使える、まったく無駄はない。それに引き換え、使用済み燃料の貯蔵施設は、短期間の貯蔵するだけだから、こちらこそ無駄な投資といえよう。

 原子力に反対の人たちは、国内に再処理施設や廃棄物処理施設がない頃、原発を称して、「トイレのないマンション」といっていたではないか。こういった施設が青森県は六ヶ所村に着々と完成してくると、「凍結して見直せ」と主張する。支離滅裂もいい加減にしてもらいたい。

            「G研」代表