さて、ここに書かなければならない新聞の切り抜きや雑誌など、忘年会だ新年会だと世間並みにお付き合いに忙殺している間に、我々の机の上にうず高く積まれてしまいます。発売から2週間も過ぎた週刊誌などはスキップさせていただくとして、日刊紙の社説など、原子力界に対するご助言の類は、有り難く威儀を正して拝読しなければなりません。よもやおろそかにほろ酔い機嫌で走り読みなどできるわけがございません。
そこで、まず、12月23日付けの朝日新聞の社説から、再度熟読させていただきました。して、タイトルは、
<社説> 「虚構の旗を降ろそう 岐路に立つ原発計画」
茨城県東海村にある原子燃料加工会社、ジェーシーオーの東海事業所で、わが国の原子力開発史上はじめての臨界事故が起こり、これまたはじめての原子力関連施設での放射線被曝による犠牲者を出してしまいました。このこと事態は、同じ原子力界で仕事をしてきた者として、残念でなりません。やり場のない憤りすら感じております。
ですからいかなるご批判にも傾聴せねばならないと考えております。しかし、わが国のエネルギー政策の一翼を担ってきた「原子力開発計画」を「虚構」だったとは、あまりにも酷い表現ではありませんか。
改めて「虚構」の意味を国語辞典で引いてみますと、「事実でないものを事実らしくみせかけること。つくりごと。いつわり」などとなっています。原子力発電システムは「つくりごと」「いつわり」だったのでしょうか。
それとも、朝日新聞は、原子力関係者は「原子力の安全性」を「安全でないものを安全らしくみせかけ」てきた、とでもいいたいのでしょうか。「安全神話は今回の臨界事故で完全に崩れさった」と揶揄されていますが、そもそもこの「安全神話」という言葉自体、少なくともわれわれ原子力技術者から発したものではないはずです。
原子力は、放射線がついて廻るし、注意してないと核分裂連鎖反応をも起こしかねない可能性を秘めた技術を扱っていますから、「安全神話」などとは決して軽々に使える言葉ではありません。むしろ最大の注意を払わなければならない工学システムと考えています。
そう考えているからこそ、他の分野にはない複雑な許認可を要求されていますし、原子炉運転主任者をはじめ、放射性物質取り扱い主任者、核燃料取り扱い主任者など、いくつもの免許制度も科せられているのです。素人が運転管理しても充分に「絶対安全」性が保てるなら、こういう厳しい安全規制など不要ですし、原子炉の運転員など、車のドライバーズライセンスのように誰でも3カ月程度の講習で運転できるようになるはずです。
その上、原子力安全委員会や原子力委員会なる総理大臣の諮問機関もあります。これらの存在が「原子力は最大の注意を払わなければならない」とする原子力関係者の基本的な考えの何よりの証明です。
まあ、工学システムの安全論議はつきませんが、それは追々させていただくことにして、ここは本論の12月23日付け朝日新聞の社説に戻ることに致しましょう。