[P.60] >私は、今まで性善説をとっていたが、しかし、この事故以来、性悪説に変わ >りました。安全のシステムを組み立てていくときには、性悪説でないとでき >ないのかもしれない。原子力システムの安全性は、放射線といえ核反応といえ、また、核兵器への転用といえ、「性善説」を唱えるに値するものは何処を探してもありません。「性悪」だからこそ、安全システムを何重にも講じてきたのではございませんか。
[P.60] >面白かったのは、いよいよこれで危機は脱出したなというときに、多くの人 >が私のところにやってきて、「なんで水を抜くと収まるのですか。水をかけ >たほうが鎮火するのでは・・・」と聞いてきた。これはやはり文系の方たち >に対する理科教育の必要性があると思いましたね。いくらなんでも文系の方々に対して失礼ではございませんか。理科系でも水による中性子の減速という概念を知らない人は結構いらっしゃいます。文系の方でも原子物理学の基本をよく知った方は少なくありません。問題は、日本全体の原子力を含めたエネルギー教育、環境教育が根付いていないということです。「面白かった」というご発言は、やはり軽率ではございませんか。
[P.61] >原発を大消費地の東京から遠く離れた所に置くのが得か、もっと小型で安全 >なものがあれば、東京のすぐ側、、極端にいえば都心に置くとか、それが出 >来るのか。この問題に関してはやはり国民の合意をとりながら技術的な面で >進めていく必要があると思います。お言葉ではございますが、東京都心に原発の立地を持ってこないのは、安全性に問題があるからではないはずです。原発の立地は、復水器の冷却用に海水など大量の水が確保でき、地盤がしっかりしていることが最小限度の条件で、ここまでは火力発電と同じです。違うところは、火力は、ほとんど毎週運んでこなければならない燃料の輸送用タンカーが横付けできる大きな港が必要となりますが、原発にはそれはあまり重要ではありません。
つまり、原発は、極端なことを言えば、水としっかりした地盤さえあれば、何処にでも建てられるのです。ですから、土地の価格が安いところ、地域開発との共存が図れるところなども考慮に入れて立地点を見つけているのです。ですから、何も安全性に欠陥があるから過疎地に持っていっているのでは決してありません。前原子力委員長がこういうご発言をされることは心外です。
[P.61] > 例えば家を建てる人は必ず太陽光発電の装置を屋根に付けるとか、ビルの >壁面や屋上に設置させるとか、そのくらい奨励しないと、(本当の実用化は) >無理だと思います。もっと国が新エネルギーの実用化にお金を出すことが必 >要ですね。新エネルギー政策に関する先生のご発言も、未だに巷の評論家のように思えてなりません。いまや先生は、「前科学技術庁長官兼原子力委員長」という立派な肩書きがついた参議院議員なのです。国会審議で大いに発言していただきたいと存じます。
[P.61] > 原子力の安全対策は何も今回のような問題だけではなくて、高レベル放射 >性廃棄物をどうするのかということも未解決です。安全に関しては非常に心 >配ですので、こういう事故に自分自身が立ち会ったわけですから、これは不 >幸なことではあるけれども、今後将来に向けて役に立つような方向に生かし >たいと思っております。先生のここのご発言も、こういった未解決の問題を早期に解決する行政のトップにいらっしゃったのですから、ご自分の在任中に、なぜ解決できなかったのか、解決するにはどういう難しい問題が横たわっているのか・・・。例えば、この高レベル放射性廃棄物問題に対して、ご自分はどうお考えなのか、あるいは在任中どういうことをお考えになっていたのか、などを、元東大総長ではなく、前科学技術庁長官兼原子力委員長から国民は聞きたがっているのではないでしょうか。
大先輩である先生のご発言を、自分たちの無力さも省みず、批判しました数々、平にお許し下さい。例えそれが大先輩であろうと、仲間内であろうと、大いに批判しあう姿勢こそ、原子力界の失われた信頼を取り戻す道と考えましたから、あえてこの時期に出された先生のご主張をみなで考えてみました。
「G研」代表