天然ウランの中には核分裂連鎖反応を起こす同位元素ウラン235(U235) とそのままでは核分裂連鎖反応を起こさないウラン238(U238)とがあり、 しかもその燃料として使えるU235はわずか0.7%程度しか含まれていない。 あとの99.3%はU238である。
天然ウランの中に99.3%も含まれるU238は、そのままでは核分裂連鎖 反応を起こさないが、原子炉の中で中性子を吸収するとU239になり、それは 半減期で24分の速度でネプチニウム239(Np239)になる。そしてNp 239は半減期で56時間の速度でプルトニウム239(Pu239)になるの である。
このPu239がU235と同じように核分裂連鎖反応を起こすから原子炉の 燃料として使えるのである。しかもそのPu239は日本国内の原子炉で生産さ れるから「純国産燃料」として貴重な資源となるのである。
天然ウランの0.7%しか利用せずにあとの99.3%を捨ててしまうか、そ れとも高速増殖炉を実用化して貴重な地球資源である天然ウランを100%まで 有効利用できるようにするかは、高速増殖原型炉「もんじゅ」の成功にかかって いるといっても決して過言ではない。
「中国、インドなども同型の原子炉を開発中で、中国は今夏、実験段階の発 電を始めている。国際的な研究開発拠点として、欧米からは、日本の『もん じゅ』の安定運転に関心が寄せられている」
「もんじゅ」の成功は、日本国内への貢献に止まらず、中国、インドといった 経済成長著しい新興国はもとより先進工業国である欧米からも「『もんじゅ』の 安定運転に関心が寄せられている」のである。
「欧米が高速増殖炉の実用化に成功してから日本もそれを買えばいいではない か」といった意見も仕分け人の中から聞けそうだが、それは「何故1位でないと いけないんですか? 2位ではいけませんか」といった意見と同じである。それ ではまったくいけません。何故なら「日本は技術立国」という大看板を下ろさざ るを得なくなるからである。
「原子力政策については、政府のエネルギー・環境会議や原子力委員会など
が、来夏を目途に見直している。『もんじゅ』も、その中で位置づけられる
はずだ」
「長期的観点で原子力を議論してエネルギーの最良の組み合わせを決める必
要がある」
政府直属の機関だけでなく、日本に存在する官民合わせてあらゆるシンクタン クを総動員してでも、グローバルでロングレーンジのエネルギー政策を検討すべ きである。それを仕分け人によるわずか数時間の議論で得た結論を今後の我が国 のエネルギー政策に提言するとは、おこがましいも甚だしい。
「だが、枝野経済産業相は、仕分けの場で、原発の全研究費を再生可能エネ ルギーの研究に投じれば電力はまかない得ると述べた。今の技術水準からは 容易なことではない。無責任ではないか」
こういう人がエネルギー担当大臣では困るのだ。「餅は餅屋に任せるべき」と いう諺をご存じないのだろうか。
ところでこの大臣の私邸の屋根には太陽光発電のパネルが乗っているだろうか。 再生可能エネルギーに切り替えるべきと主張する大臣自ら率先して行動すべきで ある。
技術開発というものは、その開発費に比例して成果が得られるとでもお思いだ ろうか。比例して成果が得られないから「仕分け」が行われているのではないの か。
「今回の仕分けは「政策提言型仕分け」と銘打たれている。原子力政策から は、『もんじゅ』のほかに核融合の研究開発なども対象とされた。だが、や はり、予算の効率化に終始した」
研究開発分野における予算が妥当であったかどうかを判断するには、その分野 の専門的知識が十分脳裏に詰め込まれた専門家でないと非常に難しいといえよう。 また「経費の見積もり」ができる専門家の協力も必要であろう。
単なる非専門家による「予算の効率化」の議論などは無用の空論以外の何もの でもないといえよう。
「重要政策は、多面的な論議を経て決められるべきものだ。仕分けには限界 がある」
まったくそのとおりである。
「G研」代表