■現場力発揮■供給が回復■
トヨタ自動車グループの関東自動車工業。被災した岩手工場(岩手県金ヶ
崎町)で6月、期間従業員100人の募集が始まった。
震災で操業停止に陥った同工場。だが、グループを挙げて設備や部品供給
網の復旧を急いだ結果、6月には稼働率が9割程度まで回復した。震災前の
計画通り、年末には小型ハイブリッド車(HV)の組み立てを始める予定。
期間従業員の採用はさらに増える可能性もある。
「生産は7月以降、年初計画の水準を回復する」(トヨタの豊田章男社
長)。正常化の時期は震災直後の想定よりも大幅に早まる。
東日本の工場被災で寸断した部品供給網。生産は日本全国のみならず、北
米や東南アジアでも滞った。だが企業は「現場力」を発揮。3月に過去最大
の落ち込みとなった鉱工業生産指数は震災前水準の回復が視野に入ってきた。
「年度下期の受注は急増するのではないか」。自動車電装品大手のミツバ。
阿久戸庸夫社長は主力工場に、パワーウインドー向けモーターなどの在庫積
み増しを指示した。電炉大手の東京製鉄には自動車向け鋼板の出荷要請が相
次いでいる。
生産回復を受けて、輸出も持ち直してきた。震災ショックが癒えてきたの
は家計も同じだ。
百貨店の三越や伊勢丹を抱える三越伊勢丹ホールディングス。首都圏の郊
外店を中心に、主力の国内百貨店の売上高は4月以降、計画を上回り続けて
いる。「震災後、都心ではなく、近場で買い物をする人が増えている」(石
塚邦雄社長)
都内の金券ショップでは東京−新大阪間の新幹線回数券の価格が上昇に転
じた。プリンスホテルでは、震災でキャンセルした宴会やパーティーを9月
以降に再予約する動きが出てきた。自粛ムードが和らぎ、人が出張や旅行・
レジャーなどに再び動き始めている。
「節電消費」も広がる。東芝ホームテクノ(新潟県加茂市)が5月に発売
した省エネ型の最新扇風機。2万5000円もするが注文が殺到し、月50
00台だった出荷計画を2倍に引き上げても供給が追いつかない。
震災の影響で、日本経済は今年4〜6月期も3期連続となるマイナス成長
に沈んだもようだ。だが想定より早い企業と家計の立ち直りで、7〜9月期
はプラス成長に浮上する公算が大きい。
問題はその後。財政赤字の膨張や少子高齢化などの構造問題に加え、震災
後の日本経済は新たな成長制約を背負い込んだからだ。
最大の制約は列島に広がる電力不足への懸念。東京電力福島第1原子力発
電所の事故をきっかけに、点検停止中の原発の運転再開に地元自治体が反対
姿勢を強める。日本経済研究センターの試算では、すべての原発が運転を再
開しなかった場合、工場稼働率の低下などで日本経済には年7.2兆円の損
失が生じる。
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