<その3>

<社説>==[電力自由化]

         競争と安定供給の両立を図れ

                 読売新聞(2001年11月5日)


 具体的には自由化範囲の拡大が考えられる。現在は2万ボルト以上の特
別高圧線で電気を受け入れ、2千キロ・ワット以上を使用する大規模事業
所だけが自由化されている。これを仮に6千ボルト、5百キロ・ワットに
広げれば、料金が割高な中規模事業所も電力会社を選べるようになる。 
 自由化の範囲を広げるのもいいが、それによって参入する新規事業者に、いかにして供給責任を負わせるか、また、環境への配慮はいかばかりか、といった面で既存の電力会社並みに可能なことが必要最少条件である。

 既存の電力会社が新規事業者から徴収する送電線の使用料や、送電量が
約束と違った時の”違約金”なども、参入を促す方向で見直すべきだ。 
 送電分野だけではない。例えば、オイルショックの時のように、石油が予定通り入らないから発電はできない、あるいは原油価格が高騰したので、契約の値段では取引できない、といった事態も考えられる。こういった場合、どう対処するというのか? 「後は大手の電力会社さんよしなに」では話にならない。

 欧米の一部では、電力会社を発・送・配電に三分割する究極の自由化が
実施されている。発電会社と配電会社は入札で電力を売買し、中立的な送
電機関がその契約に従って送電する仕組みだ。            
 電気の流通を分割すると言うことは、それだけ中間マージンを取られ、エンドユーザーである我々一般家庭の消費者にメリットがあるとは考えられない。

 アメリカは広大な国土に小さな電力会社がひしめいているから、発電だけ、送電だけ、配電だけといった事業でも十分やっていける。

 また、EUは、地続きで国境をまたいで電力の流通網が広がっているし、原子力発電所の建設を大幅に進めてきたフランスから電力の輸出が盛んに行われているという事情からすれば、そのシステムをそのまま日本に持ってくることはできない。

 しかし、自由化をここまで進めると、電力供給はどうしても不安定にな
る。発電会社が「電力不足の状況を作り、電気の卸売価格をつり上げたい」
という誘惑にかられ、設備投資を怠るからだ。            
 「電力供給の不安定化」、これが最大のネックである。自由化を進める前に、この安定供給の対策を十分すぎるほど検討しておかなければならない。

 カリフォルニア州の電力危機も、それが主因と見られている。    

 この夏、猛暑に見舞われた米国の大西洋岸では、首都ワシントンもニュ
ーヨークも停電の寸前まで追い込まれた。自由化で発電所や送電網への設
備投資が進まず、供給不足はかなり深刻だ。             
 自由化を強力に推し進めてきたアメリカの、こういった「供給不足」の事態を、日本の関係者は「対岸の火事」視する傾向にある。これこそ最も注意しなければならない傾向である。

 米国は「投資を誘発する自由化方式」を模索しているが、まだ有効な答
えは見いだせていない。日本が発送電分離の論議に踏み込むのは、「米国
の実験」の成否を見届けてからでも遅くない。            
 大賛成! 「急がば回れ」「慌てる乞食は貰いが少ない」といったことわざをいま一度噛みしめ、消費者にとって最も良い方法を考えてもらいたい。

           「G研」代表