□■非常時のルール■□
工程表で、事故収束への意思が表明されたことは評価できるが、絵に描い
た餅にならないだろうか。
今一番必要なのは、原子炉の安定冷却だが、工程表は総花的で相反するも
のもある。例えば、放射性物質の放出はほぼ止まっているのに、原子炉建屋
を覆うカバーが必要だろうか。炉心は今も2000度超の熱があり、カバー
で覆えば、中は蒸気風呂状態になって作業がしにくくなる。
まず、炉心がどんな状態になっているか、正確に見なければならない。冷
却するには、ポンプで水を回す必要があるが、水の放射性物質濃度はどんど
ん高くなっている。水が普通の状態ならいいが、どろっとしていれば、ポン
プでは回らないかもしれない。今はそれもわからない。早く敵の正体をつか
まなければ、正しい対策は立てられない。
それには、原子炉に近づけるようにしなければならない。今は周囲にがれ
きや汚染水があって、放射線量も高い。そこのがれきを取り除いて、除染す
る。整地をして、遮蔽物を置く。放射線との戦いの「戦場」を作ることが重
要だ。
東電も整地を進めているが、問題は平時のルールで行われていることだ。
がれきなどは砕いてドラム缶に入れているが、戦場なのだから、非常時のル
ールでやらなければならない。がれきはドラム缶に入れなくても構わない。
土を掘って、その中に埋めてしまう。収束後、片づければいい。
発電所構内とその周辺の海域は「特別区域」にし、放射線は多少あっても
構わないという非常時のルールを適用する。その外では平時のルールを適用
する。そんな特別なやり方をしないと、いつまでたっても原子炉の冷却がで
きない。
今は、どこが司令塔だかわからない。政府と東電は「統合本部」を設置し、
それを菅首相が統括しているのだから、工程表は菅首相が発表すべきだった。
それを東電にやらせたのは、しっくり来ない。原子力発電に精通し、しっか
りした総司令官を置く必要がある。
日露戦争の大山巌・満州(現中国東北部)軍総司令官のように、信頼でき
る総司令官と参謀を置き、内閣はなるべく口を出さず、後方でバックアップ
するような体制にすべきだ。東電や原子力安全・保安院など政府機関が、そ
れに従っていくような体制ができれば、事態は収束に向かう。
総司令官は本来、原子力安全委員会がなるべきだが、国民向けに発信して
いない。米スリーマイル島原発事故では、当時の米原子力規制委員会(NR
C)のハロルド・デントン原子炉規制部長が現地へ行き、混乱している情報
を集めて自分で解釈し、発表した。指揮も執った。今回も、日本の原子力界
がこぞって推薦できる人を探し、その人を中心にやっていくべきだ。
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